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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
なぜアジア選手権「台湾代表」に日本の高校生が?…“長距離後進国”の15歳が日本の駅伝名門校へ留学のワケ「台湾にいたらアジアで戦えない」
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2025/06/30 06:00

5月のアジア選手権5000mに台湾代表として出場した18歳の簡子傑。現在は仙台育英高の3年生だが、なぜ簡は日本への進学を選んだのか
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初めてのシニアの国際大会は、簡にとって少しほろ苦いものになった。
ミックスゾーンで我々日本のメディアが日本代表の2選手に話を聞いている隣で、簡は台湾のテレビ局のインタビューを受けていた。それも、小型のハンディカメラではなく、照明、音声付きの撮影クルーによってだ。それは、簡が台湾で注目を集めるアスリートであることの証でもあった。
「だから、結構プレッシャーが高かった……」
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簡ははにかむようにこう話したが、注目されるのは当然のことだろう。
台湾南部にある高雄出身の簡は、アテネ五輪マラソン代表の母を持ち、中学時代は父の指導を受けて、1500mや3000m、5000mの台湾中学記録を打ち立てた。
台湾の陸上界に目を向けると、短距離種目や投擲種目では世界レベルに手が届くところにいる選手もいる。だがその一方で、長距離種目はなかなか世界の中で――いや、それ以前にアジアの中でもレベルが高いとは言えないのが現状だった。
「長距離後進国」の希望の星…その決断は?
それゆえ簡は、久しぶりに現れた台湾長距離界の「期待の星」でもあった。
そんな期待も背負って、簡は中学卒業時の15歳のときに大きな決断をくだす。日本の高校駅伝の名門・仙台育英高校への進学を決めたのだ。
<次回へつづく>

