甲子園の風BACK NUMBER
高校時代の大谷翔平が断言「めちゃくちゃ良いピッチャーだ」東北の好投手とは何者か?「もう1回翔平を甲子園で投げさせてあげたい」花巻東チームメイトの思い
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上杉純也Junya Uesugi
photograph bySankei Shimbun
posted2025/08/08 06:00
2012年のセンバツ大阪桐蔭戦で投球する大谷翔平(花巻東)
高校時代の大谷翔平が断言「めちゃくちゃ良いピッチャーだ」
――試合経過を見ると6-6の同点に追いついてからは試合が落ち着いた感じです。そこから2点は取られましたが、それ以上の余分な失点を与えなかったことが9回裏の逆転サヨナラ勝ちに繋がったのでしょうか?
小原 僕の後に投げた佐々木(毅)も頑張ってくれて、僕は投手ではダメでしたけれど野手として少しは貢献できた気がします。結果的に9-8で勝つのですが、日大山形戦は本当に苦しい試合でした。
――続く学法福島戦は一転して投手戦になりました。2-1での9回サヨナラ勝ちです。
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小原 学法福島の谷地(哉耶)投手はかなりの好投手だというのは知っていました。当時の大谷も、「めちゃくちゃ良いピッチャーだ」と言っていました。それくらい凄い投手でした。
――大谷選手は具体的にどの辺りが凄いと言っていたのでしょうか?
小原 大谷が言っていたのは「(谷地投手は)ストレートとスライダーの投げ方がまったく一緒で見分けがつかない」と。凄く嫌がっていました。もの凄くいい投手だと。この試合、確か大谷はヒットを打っていないと思います。打っていたらもう少し点が入っているはずです。
「もう1回翔平を甲子園に連れて行ってあげたい」
――そして準決勝の光星学院(現・八戸学院光星=青森)戦も1点差ゲームとなりました。
小原 僕は最初と最後に投げました。9回表に2アウトランナー二塁の場面で登板して、天久(翔斗)選手にライト前へ打たれて、それが決勝点になってしまいました。
――結果、8-9の惜敗となるのですが、勝った光星学院がその後に秋の明治神宮大会で優勝したことで東北地区に明治神宮枠(1枠)が回ってきました。そして花巻東が2012年の春の選抜に選ばれたわけです。この秋のチームの戦いぶりを改めて見てみると小原さんと佐々木(毅)さんの奮闘ぶりが窺えます。かたや大谷選手はケガで投げられなかった分、打撃で2人を盛り立てていったという感じでしょうか。
小原 大谷が打線にいるのといないのとでは相手に対するプレッシャーもかなり違いますし、球場中の雰囲気が変わるんです。彼の存在がいかに大きいのかということだと思います。点に絡んだかどうかは別としてやっぱり大きいものはありました。
――この秋の間、投げられなかった大谷選手からは、2人に何か言葉はあったのでしょうか? 例えば「申し訳ない」とか。
小原 それはなかったですが、「できることはするから何とか頑張ってくれ」という話はずっとしてくれていました。自分と佐々木(毅)も、大谷本人が一番悔しいというのは分かっていましたし。投げたいのに投げられないという状態だった。僕らとしてはもう1回翔平を甲子園に連れて行って投げさせてあげたいという気持ちでした。《インタビュー第2回に続く》
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