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マリノス移籍寸前、号泣サポーターが直談判「アマラオは必要なんだ!」で涙の急転残留…愛されブラジル人FWが明かす“FC東京ウラ話”
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byYokohama FC
posted2025/06/27 17:02
長年にわたって日本に住み続ける名FWアマラオ。古巣・FC東京への愛を語った
「全然。チームが僕に期待してくれることは嬉しかったし、誇りに思った」
――あなたのニックネームを決める出来事が起きたのは、1997年です。9月7日に国立競技場で行なわれたフランスW杯アジア最終予選のウズベキスタン戦で、日本代表が三浦知良の4得点などで6-3と大勝。その翌日に行なわれたJFLの東京ガス対川崎フロンターレの試合で、あなたが4得点を記録した。以来、東京ガスのサポーターが「カズが日本のキングなら、アマラオは東京のキングだ」と言い始めた。
「とても光栄だったけれど、当初、キングと呼ばれることには抵抗があった。我々ブラジル人にとって、キングとはペレのこと。それに、ジーコやラモスが日本のフットボールの発展に偉大な貢献をしていたからね。でも、サポーターの代表者から『僕たち一人一人にとってのキングなんだ』という説明を受けて、やっと納得した」
J1昇格時の胴上げ…人生で最高の瞬間だ
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――1998年、東京ガスが翌年からJリーグ入りを目指す方針を発表。この年、JFLで優勝してJ2へ昇格。翌年、FC東京という新たなクラブ名でJ1昇格を目指します。
「Jリーグでプレーする、という目標ができて、僕たち選手は大いに奮い立った。99年はずっと上位争いをしていたけど、10月のナビスコ杯(現ルヴァン杯)準決勝で左足首を剥離骨折してしまった。以後、チームは低迷した。僕は懸命にリハビリをして、11月に復帰した。それでも勝てず、一時はJ1昇格を諦めかけた」
――J2最終節前の時点では、FC東京は2位の大分トリニータと勝ち点1差の3位でした。ただFC東京は1-0で勝利し、大分が試合終了直前の失点で引き分け。これでJ1昇格を成し遂げた。
「昇格が決まると、僕はピッチへ下りてきた大勢のファンに取り囲まれ、胴上げをされた。人生で最高の瞬間。あの日の喜びは、生涯忘れないよ」
――そして2000年、J1の舞台に立ちます。日本の土を踏んでから、実に9年目のことでした。
「とても感慨深かった。地道に頑張って来て本当に良かった、と思った」
マリノス移籍寸前、サポーターと涙の急転残留劇
――しかし成績は16チーム中7位。あなたは、この年に1stステージ優勝した横浜F・マリノスのオズワルド・アルディレス監督から高く評価され、好条件のオファーを提示されたそうですね。
「終始一貫して、僕は『プロならいかなる状況であろうと優勝を目指すべきだ』 と考えていた。どうしても優勝したかったから、一度はマリノスへの移籍を決意した。しかし、ホーム最終戦の前日と翌日の試合で心が動いたんだ」
――何があったんですか?

