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「不思議な縁で」卒業後も同じ実業団に…青学大2014年同期・中村祐紀は「マラソンにも勝てて悔いなく引退」田村和希は「僕もやめるなら同じ境地で」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byTadashi Hosoda
posted2025/06/19 17:02
卒業後に同じ住友電工に進んだ「青学2014年組」の中村祐紀と田村和希。中村が今年引退し、同期で競技をつづけるのは田村だけになった
田村の人生で一番ショッキングな出来事
「このレースは、僕にとって人生で一番ショッキングな出来事でした。ゴールしてから、あと1秒かと思うとショックで立ち上がれなくて……ただただ悔しかったです。
自己ベストを30秒近くも更新したんですけど、こんなにうれしくない自己ベストがあるんだって思いました。たった1秒で、こんなにも人生が変わってしまう。これを乗り越えないと先にいけないんだなぁと思ったのですが、それから僕は何も動いていない感じです」
田村の気持ちの奥深くに重く沈んだままになっている、“動いていないもの”とはいったい何なのだろうか。
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「あのレース以来、僕のなかで吹っ切れたものがないんです。心に楔を打ち込まれて、そこからずっと今まで鎖でつながっていて、断ち切れていない。それを断ち切ることができれば、この先、明るく楽しい競技生活が待っていると思って自分はやっているんですけど、2020年12月に時間が止まったままになっているんです」
目標を見失ってしまった
翌21年、田村は東京五輪出場のラストチャンスとなった、日本選手権の10000mに出場予定だった。だが、腓骨の疲労骨折のために出場を断念し、東京五輪という最大の目標は潰えた。
「この頃は、陸上から離れたいわけじゃないですけど、目標がなくなってしまい、何もしたくないというか、競技にあまり前向きではなかったです」
故障のため、一時的に実家に帰った。傷心の田村に対して両親は「陸上をやめてもいいぞ」と伝えたが、田村は首を横に振った。
「気持ち的にしんどかったですけど、陸上をやめようとは思いませんでした。何も達成していなかったですし、何も納得できていない。やめる勇気がなかったというのもありますが、やめられなかったです。僕にとって陸上は一番楽しいものですし、好きなので、簡単にはやめられないんですよ」

