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なぜ大手メーカーが続々プロ野球事業「規模縮小」なのか?…東大卒元プロ選手が語る“野球人口減少”への処方箋「“やせ我慢の経済学”をやめるべき」

posted2025/06/11 11:02

 
なぜ大手メーカーが続々プロ野球事業「規模縮小」なのか?…東大卒元プロ選手が語る“野球人口減少”への処方箋「“やせ我慢の経済学”をやめるべき」<Number Web> photograph by NumberWeb

東大→ロッテで活躍した小林至さん。現役引退後はソフトバンクのフロントとして球界再編などでも活躍。現在は桜美林大学で教鞭を執る

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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 今年4月、元プロ野球選手でフロント経験もある小林至氏のYouTubeが野球界に大きな衝撃を与えた。プロ野球のチームに商品提供を行っている数社のメーカーがその規模を縮小するという主旨のもので「野球マーケットの縮小」が目に見える形で迫ってきているという。果たして球界はどう変化していくべきなのか。現在は桜美林大学で教鞭を執る小林氏に話を聞いた。《NumberWebインタビュー全2回の1回目/つづきを読む》

――小林さんのYouTubeチャンネル『小林至のマネーボール~プロ野球とお金~』にて今年4月に公開された、野球道具に関する動画が話題となりました。

小林 あの動画での私の発言は、完全な勇み足。デサントさんの野球事業を「撤退」と断言してしまったことを、この場をお借りして改めてお詫びいたします。申し訳ありません。

――新聞の取材に応じたデサントは、プロや社会人向けの受注品を主軸としていくといった趣旨の方向性を示し、それを「ブランドのプレミア化」と表現しています。ですが、現実的に撤退こそしないものの、一般ユーザーにとっては「縮小」となります。

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小林 マーケットが縮小しているのは、事実としてありますよね。

大手メーカーが続々、プロ野球事業「規模縮小」を発表

――イチロー選手や大谷翔平選手といった超一流選手と契約していたアシックスも、バットやグローブ、ウェアの販売を今年9月で終了。今後のラインナップはスパイクとトレーニングシューズに限定すると発表しています。こちらも事実上の縮小と言えます。

小林 日本において、プロ野球は依然として「観るスポーツ」として根強い人気を保っています。1球団で年間200万人以上を動員する例もあるわけですから、エンターテインメント産業としては一定の成功を収めている。しかし、これはあくまで“観る側”の話であって“する側”――つまりプレーヤー人口の減少には歯止めがかかっていません。

 その背景には、野球という競技自体がグローバルで見ると、サッカーやバスケットボールに比べてマーケットが小さいという現実があります。日本企業にとっても、国内だけで野球用品の市場を成立させるのは、年々難しくなってきているのです。

――選手個人の事情はもちろんあるにせよ、アシックスならば大谷選手との契約を継続すれば、少なくとも日本における市場はそれなりに確保できたのかと思いますが。

小林 おっしゃるとおり、大谷翔平選手はスポンサー料だけで1億ドル(約150億円)規模の収入が見込まれる、世界でも稀有なアスリートです。ただ、いくら大谷選手が突出していても、彼と同じモデルのバットやグローブを大量の人が購入するかといえば、そこには限界がある。マーケット全体が縮小している中で、シンボリックな選手の存在だけで事業を継続するのはリスクが大きい。アシックスとしても冷静な採算分析の上での判断だったのだと思います。

【次ページ】 昔は「用具提供に際限なし」だったが…?

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