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「本当にデビュー戦?」16歳“二世レスラー”心希が流血激闘「とんでもない新人」対戦相手も絶賛…母・大向美智子は「もう二世って呼ばんでくれ」
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/05/30 11:06
大向美智子の長女・心希。16歳の高校2年生はマリーゴールドのリングで5月24日、鮮烈なデビューを果たした
逆エビ固めで絞られても、心希は自らの長い髪をかきわけて必死に耐えた。
反撃のサソリ固めでは長州力のように左手を突き上げた。顔面は血に染まっていたが、心希のその形相にスピリットを、プロレスラーを感じることができた。
「心希やるじゃないか」
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「これがデビュー戦?」
そんな反応が観客席に生まれていた。
「二世って呼ばんでくれ。家ではママだけどね」
心希はブリッジで粘った。なかなか3カウントが取れない状況に桜井が苦笑いを浮かべる場面もあった。心希は桜井の両手を掴むと、一度ウォームアップするような動きを見せてタイミングを計り、飯伏幸太に教えてもらったというカミゴェ(ヒザ)を桜井に浴びせた。
それでも、桜井の牙城は崩せなかった。12分33秒、桜井のSTOからのSTFで心希はギブアップ負けを喫した。
大向は母であり、コーチであり、プロレスラーの先輩だ。リングサイドの解説席から祈るような眼で娘を見守っていた。
「想像していたよりできていたので、今日は100点。自宅から往復4時間かかるリングでゼロから教えてきた。私ができることは今日まで全て教えたので、あとは自分で場数を踏んで考えて練習して、もっともっと上に行って、次は桜井麻衣にタイトルマッチやろうって言われるぐらいの選手になってほしいなと思います」(大向美智子)
「最高にうれしい言葉です。自分らしさを忘れずに強くてかっこいいレスラーになりたい」(心希)
「もうリング上の心希は私の子じゃないので、もう二世って呼ばんでくれ。リング上では心希っていうプロレスラーとして呼んであげてほしい。家ではママだけどね」(大向)
気持ちが入った熱戦だった。
幼いころはおとなしかったという心希は、ダンスや空手を学ぶにつれて家族も変化を感じる元気な性格になったという。
テレビドラマ『豆腐プロレス』の登場人物、ハリウッドJURINA(松井珠理奈)のようなかっこいいプロレスラーに憧れた。
そして「母や麻衣さんのような強いレスラーになりたい」とプロレスラーになった心希のデビュー戦は立派なものだった。




