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武居由樹の“伸びる左”がアゴを直撃「当日3キロ重かった…タンクのような体」敗者ユッタポンはなぜ一撃で崩れ落ちた?「バンタム級に異変」衝撃KOウラ側
posted2025/05/29 17:05

WBOバンタム級王者の武居由樹は同級8位の挑戦者ユッタポンを127秒で一蹴。「もう1本くらいベルトほしいっすね」と発言し会場を沸かせた
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
WBO世界バンタム級チャンピオンの武居由樹(大橋)が5月28日、横浜BUNTAIで挑戦者ユッタポン・トンデイ(タイ)と防衛戦を行い、1回2分7秒TKO勝ちで2度目の防衛に成功した。けが明けでパフォーマンスが心配された武居はなぜ不安を払拭する会心の勝利を挙げることができたのか。バンタム級戦線の今後も見据えて検証する。
ユッタポンのアゴを直撃“武居由樹の伸びる左”
目の覚めるような一撃だった。開始からわずか40秒、武居がサウスポースタイルから鋭く踏み込んでの左ボディフックをユッタポンに見舞った。武居が得意にしているロングレンジからのボディ打ちだ。これが少し効いたように見えた。続けて武居が放った左のロングフックがユッタポンのアゴをとらえると、これを食らったタイ人はキャンバスに崩れ落ちた。
ムエタイで1000戦以上の戦績を誇り、アマチュアボクシングでも300戦近いキャリアがあるというユッタポン。「経験では私のほうが勝っている」と自信を見せていたのだが、武居のロングレンジからのパンチは想像以上に伸びたということだろう。距離を把握するまでもう少し慎重に対処すべきだったがあとの祭りだ。
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武居が立ち上がったユッタポンに襲い掛かる。足元のフラつく挑戦者が必死にしのごうとするが、最初のダウンで勝負は決まった。武居はさらに左フックで2度のダウンを奪い、最後はラッシュしたところでストップ。TKOタイムは2分7秒。世界タイトルマッチ3戦目にして初のKO勝利は王者にとって悲願の内容だった。
「絶対にKOで勝ちたい気持ちが強かったので1ラウンドから倒しにいくつもりだった」
キックボクシングのK-1チャンピオンからボクシングに転向。デビューから8連続KO勝利で世界タイトルマッチを迎え、一発で王座を獲得したものの、初防衛戦を含めて世界戦は2試合とも判定勝ち。大橋秀行会長から「守りに入ったボクシングをしている」と指摘されていた。武居もそのことをよく自覚し、今回は何が何でもKOという気持ちが強かったのだ。