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阪神から日本ハムで激変「新庄再生工場」で覚醒した160キロ剛腕・齋藤友貴哉になにが起こったのか? 人生が大きく転回した新庄剛志監督の言葉
posted2025/06/21 11:00

阪神から日本ハムに移籍し新庄剛志監督のもとで覚醒した160キロの剛腕・齋藤友貴哉。一体なにが変わったのか?
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酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
JIJI PRESS
今年の目標「50試合登板」
成長と書いて「ロマン」と読む。スポーツの世界において、新たなスターの誕生はファンがもっとも心をときめかせるシーンのひとつである。最近のプロ野球でも「ロマン砲」や「ロマン枠」といった造語が現れ、世に飛び出そうと奮闘するホープに期待を寄せる。その点、北海道日本ハムファイターズのファンは贅沢である。イキのいい若手が続々と現れ、さまざまな成長譚を目の当たりにすることができるからだ。
阪神タイガースからファイターズに移籍して3年目の齋藤友貴哉もそのひとりである。6月の交流戦。エスコンフィールドで古巣のタイガース戦2試合に登板すると、いずれも走者を出しながらも球威でねじふせ、無失点で切り抜けた。開幕から一度も二軍落ちせず、防御率も1点台とアピールを重ねる日々だ。
潜在能力の高さを認められる右腕への期待の大きさは、春先の起用法からもわかる。プロ6年間で通算1セーブだった齋藤が開幕3戦目にシーズンの初セーブを挙げたのだ。
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その2日前、埼玉西武ライオンズとの今季開幕戦は金村尚真が完封で飾った。2戦目は接戦の末に昨年までの守護神、田中正義が締めくくってセーブをつけた。そして連勝で迎えた3月30日の3戦目、ファイターズは2点リードで9回を迎えた。新庄剛志監督がマウンドに送り出したのはリリーフエースの田中ではなく、齋藤だった。
齋藤は抜擢に応える。最速157kmの速球で押して、わずか9球の三者凡退だった。
4月には四球が引き金になって失点を重ねる悪癖も顔を覗かせたが、次第に投球動作から力みが消え、ビハインドの試合展開での登板を重ねるなかで、持ち直していった。
昨季、自己最速を160kmに更新した素材豊かな剛腕は意気込む。
「中継ぎ投手のひとつの大台とされるのが50試合登板です。今年の目標として、そこはクリアしたいと思っていますが、あんまり50試合を見ることなく、目の前の試合を一つひとつ全力で抑えていくことが大事だと思っています。でも、『クローザー』という言葉をいただいているので、堂々と投げていきたいですね」
新庄監督の「ダブルストッパー構想」
田中と齋藤のダブルストッパー構想が明るみになったのは7カ月ほど前である。
24年11月30日、エスコンフィールドで行われたファンフェスのフィナーレでマイクを握った新庄は25年の戦い方を明かしていく。開幕投手を金村に、開幕戦の4番を野村佑希に託した。新庄は「続きまして、抑えを、齋藤友貴哉!」とつづけると、指名された齋藤は少し驚いた表情を浮かべながら、「来年、抑え、やります。抑えます!」と声を上ずらせた。新庄は苦笑いしながら「いまのコメント聞いてたらちょっと不安になるので、もうひとり、田中正義!」とぶち上げた。起用法を披露する新庄のマイクパフォーマンスは近年の恒例になっているが、齋藤には予感があったという。