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「井上尚弥vs中谷潤人」をぶち壊せるか? 28歳西田凌佑「負けると言われたほうがいいですね」一度は大手企業に就職…“奇妙な世界王者”の正体
posted2025/05/30 11:07

記者会見で中谷潤人との統一戦への意気込みを語る、IBFバンタム級王者・西田凌佑(28歳)
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
6月8日、IBFバンタム級王者・西田凌佑(28歳/六島)がWBC世界同級王者・中谷潤人(27歳/M.T)との王座統一戦に挑む。無敗同士の日本人対決ながら、西田はキャリアとパンチ力で上回る強敵に「負けても失うものはない」とチャレンジャーの姿勢を崩さない。控えめな発言の裏に隠し持った勝利への執着心とは?【NumberWebインタビュー全2回の前編/後編も公開中】
違和感があった。4月18日の記者会見で西田凌佑が二度、口にした「挑戦」という言葉だ。
一度目の「挑戦」は、文脈的に不自然ではなかった。「自分としては、タイトルを返上してでも中谷選手に挑戦したいと思っていたんですが」。指名試合が避けられないのであれば、IBF世界バンタム級王座を返上し、挑戦者の立場でWBC王者の中谷潤人と戦うことまで覚悟していた、というわけだ。だが、直後に西田はこう続けている。
「ベルトをかけて、こうやって中谷選手に挑戦できることがとても嬉しいです」
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結果的にWBC王者とIBF王者による統一戦に収まったのだから、「挑戦」ではない。下馬評がどうであれ、よりフラットに「対戦」といった言葉を選んでもよかったはずだ。
王者なのに、挑戦。このワードチョイスは意図したものなのか、あるいは無意識なのか。そして実際のところ、どれほどの野心を抱いて中谷とのビッグマッチに臨もうとしているのか。推し量ろうにも、西田についての生の情報を欠いていた。
過去の試合を通じて優れたボクサーだと理解していても、どこか輪郭がぼやけている。井上尚弥とのメガマッチに向けて歩を進める中谷に、待ったをかけようとする男。西田凌佑とは、いったい何者なのか。それを知るために、大阪・長居の六島ボクシングジムを訪ねた。