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「井上尚弥vs中谷潤人」をぶち壊せるか? 28歳西田凌佑「負けると言われたほうがいいですね」一度は大手企業に就職…“奇妙な世界王者”の正体 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2025/05/30 11:07

「井上尚弥vs中谷潤人」をぶち壊せるか? 28歳西田凌佑「負けると言われたほうがいいですね」一度は大手企業に就職…“奇妙な世界王者”の正体<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

記者会見で中谷潤人との統一戦への意気込みを語る、IBFバンタム級王者・西田凌佑(28歳)

 西田がボクシングに出会ったのは奈良県立王寺工業高校1年生のときだった。父は元プロボクサーだったが、習いごとは水泳に体操と、西田自身は格闘技とは無縁の少年時代を過ごす。中学時代に熱中したのは陸上の長距離だった。駅伝が好きで、都大路や箱根路を駆け抜けるランナーに憧れた。

 だが、王寺工の陸上部には長距離を専門とする部員がいなかった。そこで友人に誘われてボクシング部に体験入部した。ミットを打ち、サンドバッグを叩く。純粋に「楽しい」と思えた。正式に入部すると、家でも父からボクシングの手ほどきを受けた。

高3で国体優勝、名門・近畿大学へ

 未経験からめきめきと上達していった西田は、王寺工3年時に国体フライ級で優勝を果たす。本人は「たまたまです」と謙遜するが、才能に恵まれていたのは疑いようがない。いつしか憧れは長谷川穂積や山中慎介に変わっていた。

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 アマチュアボクシングに青春を捧げる覚悟で近畿大学に進んだ。入学当時は、本気で全日本選手権優勝や世界大会への出場を目指していた。だが、1年時に左肩を脱臼するアクシデントに見舞われる。可動域が狭くなり、思うようにパンチが打てない。

「だんだんモチベーションが下がっていきましたね。燃え尽きた感というか、体が動かんわ、と勝手に思っちゃっていた。いまにして思えば、自分で制限していたんです」

 ふと脇に目を向けると、“普通の大学生”としての日常があった。気づけばボクシングは全力を注ぎ込むものではなく、「ただの部活」になっていた。

「チャンピオンになるためにじゃなくて、行かないといけないから部活に行く、みたいな。将来これで食べていくとか、全然想像もできなかったです」

【次ページ】 大学卒業後に大手パンメーカーに就職

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