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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「この舞台に戻ってこられて嬉しい」箱根予選会で“1年生が日本人No.1”あの「衝撃のルーキーイヤー」から2年…東農大・前田和摩(20歳)の復活劇
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和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2025/05/28 06:01

昨年の日本選手権1万mでは学生新記録で3位に食い込んだ東農大の前田和摩。そこから1年以上のブランクを経て、ようやく表舞台に帰ってきた
優勝した葛西潤(旭化成)のラスト1000mでのスパートにもただ一人対応。最後は葛西に突き放され、太田智樹(トヨタ自動車)にも抜かれたが、3位に入り表彰台に上がった。
「正直ゴールしてびっくりした自分もいる」
前田自身、驚きを隠さなかったのがその記録だ。27分21秒52のフィニッシュタイムは日本歴代5位(当時)。さらには田澤廉(トヨタ自動車)が駒大在学時の2021年にマークした日本人学生最高、佐藤圭汰(駒大)が2023年に打ち立てたU 20アジア記録およびU 20日本記録をも塗り替えた。
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規格外の活躍を続ける前田は、一気に日本のトップランナーへと駆け上がっていった。
一方で、日本選手権の際に世界への意識を問われた前田は、こんな謙虚なことを口にしていた。
「もちろん在学中も世界の舞台で戦いたいと思っていますが、監督、コーチ、チームのみんなも、自分のことを尊重してくださり、このチームがあって今の自分があると思っています。今季の前半は全日本選考会、後半は箱根予選会に焦点を当ててやっていこうと思っています」
学生駅伝の出場権が1つもなかった状況に、チームの力になることを誓っていた。
日本選手権後に襲われた「肺気胸」
ところが、この日本選手権の後に肺気胸を発症。全日本選考会は欠場せざるをえず、前田抜きで戦ったチームは14位と惨敗した。
これまで順調だったのが、突如として歯車に狂いが生じると、その後もなかなか噛み合わなかった。
「気胸が治って、『よし、これから頑張るぞ!』という時に体調を崩したり、ケガをしたりして、むず痒かった。この1年間、チームのレースに全然出られなくて、みんなに申し訳ないな、悔しいなっていう思いがありました」
箱根予選会は、前田が不在でもチームメイトが奮闘を見せた。しかし、次点の11位に終わり本大会出場を逃した。10位の順大との差はわずか1秒だった。