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心残りは「井岡一翔選手と戦えば勝てたと思う」“世紀の番狂わせ男”木村翔が引退を決意した理由…「僕みたいなボクサーはハングリーさがないと」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byTadashi Hosoda

posted2025/05/12 11:04

心残りは「井岡一翔選手と戦えば勝てたと思う」“世紀の番狂わせ男”木村翔が引退を決意した理由…「僕みたいなボクサーはハングリーさがないと」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

引退後は念願のジムを故郷の熊谷で開いた木村翔。街を盛り上げるために貢献していきたい、と熱く語る

井岡一翔ともし戦えていたら…

「井岡一翔選手とは、本当にずっと戦いたかったんです。それこそ、同世代のエリート中のエリート。井岡選手が相手だと『食ってやるぞ』というハングリーな気持ちがまた湧き上がってくる気がして。実際、戦えば、勝てたと思うんです。僕に勝った恒成君を倒しているし、かなり強いのは分かっていますけど、負ける気はしなかった。

 井岡選手の立場になれば、メリットのない試合なので、僕でもやらないと思いますが、こっちは(メディアの前で)口に出さないと、絶対にできないと思ったから。もしも田中戦に勝っていれば、可能性はあったかもしれません。僕は自分でチャンスをつぶしたんですよね」

 思いを馳せる口調は柔らかいが、悔しさもにじんでいた。プロキャリアの区切りは、タイのバンコクでつけた。2023年1月25日、再び世界ランカーに名を連ねるためにWBAインターナショナルフライ級王座決定戦に臨んだが、決め手を欠いて中国のウラン・トロハツとドロー決着。プロ26戦目の34歳で、すっきりと身を引くことを決めた。

スパッと辞めよう

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「試合前からここで負けるようなら、世界はないと思っていました。結果は引き分けでしたが、もう次にはつながらないと思ったので、スパッと辞めようと」

 正式な引退発表まで2年以上の空白があったものの、特別な理由はない。

「タイミングを逃しただけなんです。世界チャンピオンになったら、引退後は自分のジムをオープンさせたいと思っていたので、その準備に追われていました」

 現役最後の試合を終えると、すぐに物件探しに奔走し、最終的に選んだ場所は生まれ育った街だった。昨年5月、熊谷駅近くにアマチュアのボクシング&キックボクシングジム『B Make』をオープン。すでに1年ほどが経過し、順調に会員数も増えている。

 ユーザー層は幅広く、健康促進を目的にする人もいれば、ボクシングを習いに来る子どもたちもいる。木村の背景を知り、中には剃り込みが入ったやんちゃ盛りの中高生も通っているようだ。

【次ページ】 いずれはプロジムも

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