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「正直やばいかも…」井上尚弥が2度目の被弾「リングで死ぬ覚悟がある」挑戦者カルデナスとの“あまりに濃密な一戦”を元世界王者が斬る! 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byHiroaki Finto Yamaguchi

posted2025/05/09 18:25

「正直やばいかも…」井上尚弥が2度目の被弾「リングで死ぬ覚悟がある」挑戦者カルデナスとの“あまりに濃密な一戦”を元世界王者が斬る!<Number Web> photograph by Hiroaki Finto Yamaguchi

ラスベガスで行なわれた井上尚vs.ラモン・カルデナスの一戦のポイントを元世界王者・飯田覚士氏が徹底解説した

「尚弥選手が攻勢を強めていくなかハーフタイムくらいでボディーを効かして腰を落とさせたシーンがあったんですよね。そこからなおアタックを掛けていくんですけど、相手の体に頭をくっつけてちょっと休んでいるようにも見えました。今度同じようにしたら、カルデナス選手が押し戻して左ボディーを当てて、そのまま左フックを上にきれいに返したんです。2ラウンドの左フックは別として、一番のクリーンヒットでした。それでロープまで下がらせて、目いっぱい打った左ボディーも当たって尚弥選手からしたらこの日一番のピンチ。僕も見ていて、正直やばいかもしれないなと思いましたね」

右の4連発でお返しのダウン

 効いていたかどうかは正直、分からない。角度、威力を考えれば効いていると考えるのが普通だが、絶対王者はそれをまったく悟らせないからだ。かつ、カルデナスタイムの発動後はモンスタータイムの始まりでもあった。左ボディーで押し戻し、再びカルデナスの体に頭をつけた。これは休息の意味ではないと飯田は気づかされる。

「このラウンドになるとカルデナス選手は固めたガードを崩して、ほぼL字になっていて本来のスタイルに完全に戻っていました。相打ち覚悟もそうですけど、一方で相当ダメージが溜まっていたんでしょうね。尚弥選手はここを見逃さなかった。相手の左肩に頭をつけておいて、離れたら右を放ったんです。これが効きました。多分カルデナス選手の特徴を見て、練習してきたものだったようにも感じました。最後は右の4連発でお返しのダウン。もうカルデナス選手のガードは下がったままでした。コンビネーションなんか必要なくて、右で突いていけばいいという判断も良かった」

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 つまり左肩に頭をつけたのはガードを上げさせる前に打ち込む前準備のため。これをチャンピオンは狙っていたのだった。最初のアクションこそ休んだように見えたが、それも“予行演習”と言ったところか。

 ピンチを一瞬にしてチャンスに変える。ピンチだったかどうかは井上のみぞ知るとしても、肉を切らせて骨を断つほどの凄味があった。だからこそタフで打たれ強くてあきらめない相手からダウンをもぎ取ったのだ。

8ラウンドが始まったとき「驚きました」

 普通ならもうこれで終わりである。しかし不屈のカルデナスは、最後まで闘争心をたぎらせることを止めなかった。

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