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敗者カルデナスの誤算“じつは井上尚弥にバレていた”動揺「なぜ連打されながら笑ったのか?」カメラマンが見た“井上の表情”「イーッと歯を…珍しい1枚」 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2025/05/09 11:06

敗者カルデナスの誤算“じつは井上尚弥にバレていた”動揺「なぜ連打されながら笑ったのか?」カメラマンが見た“井上の表情”「イーッと歯を…珍しい1枚」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

井上尚弥にTKOで敗れたカルデナス

山口 見えていないパンチだったと思うんですけどね。立ち上がったあとも足がふらついたりはしていなかった。やっぱり尚弥選手って打たれ強いのかな、と。2ラウンド後のインターバルでちょっと珍しい表情が撮れたんですよ。真吾トレーナーの指示を聞きながら、イーッと歯を見せていた。「やっちゃったよ~」って感じなのか、照れ隠しなのか……。とにかく一回落ち着こう、と心を鎮めていたのかもしれません。実際に3ラウンドが始まったら、尚弥選手、冷静になっていましたよ。

敗者カルデナスの“誤算”

――3ラウンドからモンスターの逆襲が始まります。

山口 尚弥選手って何がモンスターか。あらゆる能力がずば抜けていますけど、学習能力もすごく高い。「もうあれは食わないぞ」と即座にインプットした。3ラウンドでペースを握り返して、4ラウンド以降はボディから削っていく冷静な試合運びを見せましたよね。

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――井上選手のキーパンチはどれだったと思いますか?

山口 左ボディじゃないですかね。ボディブローって、本当に効いちゃうと対戦相手にも伝わる。息遣いとか、体が丸まったりとか、どんなにポーカーフェイスでもバレてしまう。カルデナスも、6、7ラウンドくらいからボディへのダメージが隠せなくなっていました。

――井上選手の連打を浴びたあと、カルデナスが笑っているシーンがありました。それまでの無表情が崩れたんです。

山口 その笑顔には気づきませんでした。ただ、ポーカーフェイスじゃなくなった時点で相当追い詰められていたのでは。ダメージの裏返しだったんじゃないかと思います。

――劣勢になったカルデナスも、左フックを振ることだけはやめませんでしたね。

山口 パンチは最後まで生きていました。とにかく打ち終わりの左はずっと狙っていた。7ラウンドにも、左から尚弥選手をロープに下がらせる場面がありました。あれは誘っているようにも見えたけれど、ひょっとしたらダメージがあったかもしれない。いずれにしても、ネリ戦とは違って“ダウンしたけど楽勝”という印象ではなかったですね。

TKOの判断「止めるの早かった?」

――8回のTKOのシーン。「ちょっと止めるのが早いのでは」という声もありましたが、山口さんにはどう見えましたか?

【次ページ】 「衰えはまったく感じない」

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