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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ヒールが可愛くて何が悪いの?」上谷沙弥が打ち明けた“ある変化”「こういうのはヒールが言うことじゃないかな」それでもファンに投げかけた言葉とは
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byHirofumi Kamaya
posted2025/04/13 11:00

4月27日に中野たむとの“敗者引退マッチ”を控える上谷沙弥
白川との白いベルトをかけた闘いでは、必殺技のフェニックス・スプラッシュの当たりどころが悪く、相手にケガをさせてしまった。たむとのシングルリーグ開幕戦では、照明用のヤグラからダイブして着地に失敗、ヒジを負傷している。サイン会では常連だったファンに「今日は泣かせにきた」と脅かされた。
ヒールになってからは“反則上等”なファイトスタイルへの変化だけでなく表情もより意識するようになった。歓喜、怒り、あるいは蔑み。プラスもマイナスも、あらゆる感情を伝えてみせるのが今の上谷の魅力だ。かつては泣いている姿ばかりが印象に残っていたが、今は違う。
「周りからも“表情が豊かになった”って言われるんだけど、それってダンスで学んできたことだった。ダンスって、たとえ上手くなかったとしても表情が豊かな奴って目が離せなくなっちゃうんだよね。もちろん、表情の裏には経験がある。喜怒哀楽、どれも経験してきた感情だから。
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私は感情が顔に出やすいタイプだし、気持ちのコントロールが苦手。それが嫌だった。些細なことですぐ傷つくし病むし。それはプライベートではマイナスだけど、プロレスラーとしてはプラスになるって気付くことができたんだよね。他の人よりいろんな感情を知ってるから。そしてどんな感情も表に出して、伝えればいいんだって」
メイクも好評で「ヒールが可愛くて何が悪いの?」
ヒールになったことで、隠すべき感情もなくなった。黒のコスチュームとメイクも好評だ。
「ブラックベースでアイラインはシルバーに赤を重ねて紫色っぽくして、あとはとにかくラメ(笑)。たまにサイン会に出ると“メイク教えてください”って聞かれることもあって。リングに上がってしもべたち(ファン)から“沙弥様!”って呼ばれたら投げキッス返したりアッカンベーしたり、けっこうサービスもしてる。ヒールだけど可愛さは捨てないというか、可愛いって言われたら受け入れる(笑)。長所を否定することないでしょ。“ヒールが可愛くて何が悪いの?”って」
上谷にとって、ヒールの意味は何よりも自由であることだ。所属ユニットH.A.T.E.は「それぞれが自立した集団」。上谷もタフになった。
フェニックス(・スプラッシュ)は封印したが、白川との再戦でだけは出した。それがケジメだった。「今日は泣かせにきた」という言葉は、ヒール転向と同時に敵にぶつけている。赤いベルトをたむから奪った試合では、ケガで動けないふりをして動揺させ、その隙を突いて「騙し討ち」で勝利。
「そう、だからネガティブな過去もリングでプラスに変換させてもらったよ」