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小椋藍にMotoGPは合っている! ドゥカティ以外でランク最上位につける小椋藍が開幕3戦で見せた快走の理由…本人は「まだまだ全然です」
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/04/05 11:04

開幕から3戦を戦い、ランキング6位につける小椋
カネットが言う「速さ」とは世界の頂点を狙うという高いレベルでの話だが、実際、Moto2でチャンピオンを獲得したシーズンでも、小椋がPPを獲得したのは2回だけだった。優勝は3回とカネットに負けている。しかし、安定性という点では圧倒的に勝っていた。怪我で欠場したレースが1回、マシントラブルでリタイアしたレースが1回。他は1レースを除いてすべて上位で完走し、ポイントを獲得。対してカネットは転倒リタイアが4回で、その差がタイトルの行方を決めた。
カネットにしてみれば、小椋は恐るるに足らぬ「速さ」のライダーだったのだろう。しかし、「速さをキープする」という能力では、小椋が圧倒的に勝っていた。小椋は一発の速さよりもアベレージで勝負するというタイプで、自ら「長いレースの方が好き」と語っている。
MotoGPマシンと相性がいい理由
トライアンフ製765cc3気筒のオフィシャルエンジンで戦われるMoto2クラスは、エンジンブレーキの調整など、ECUで出来ることは少ない。一方、5メーカーが競う最高峰クラス1000ccのMotoGPマシンは多くの制御が可能で、「ここでアクセルを開ける。ここで〇〇の機能を作動させる」など、本来ライダーがコントロールするべき領域をコンピューターがコントロールする。その制御をいかに使いこなすかが結果を左右するのだ。
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人一倍バイクトレーニングに励む小椋だが、その走りは常に慎重で、着実にタイムを短縮していくというタイプである。そのため、不安定な路面コンディションで転倒リスクが高い場合などは、パフォーマンスを発揮するまでライバルより多くの時間と慣れを必要とする。だからこそECUでコントロールされているMotoGPマシンは、小椋にとって追い風となるのではないか。
もちろん、MotoGPマシンの走りも慣れを必要とするが、それはハンドル回りに配置されたスイッチなどの操作関係の煩雑さが中心であり、Moto2マシンに比べるとライダーがコントロールする領域が狭く容易なのだと思われる。簡単に言えば、小椋はMotoGPマシンに乗ることで自身のパフォーマンスを生かせるタイプのライダーだと言える。