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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「バム戦はぜひ見たい…井岡一翔も面白い」寺地拳四朗は“上の階級”でも通用するのか? 長谷川穂積が太鼓判「倒せなくても勝つボクシングができる」
posted2025/03/18 17:38

ユーリ阿久井政悟との激闘後、スーパーフライ級への転向を示唆した寺地拳四朗。ジェシー・“バム”・ロドリゲスや井岡一翔との対戦は実現するのか
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
両国国技館で3月13日に行われた寺地拳四朗(BMB)とユーリ阿久井政悟(倉敷守安)によるフライ級2団体統一戦は、まれにみる大接戦の末、寺地が12回1分31秒TKO勝ちでWBAとWBCのベルトを統一した。実況席でこの大一番を見守った元3階級制覇王者、長谷川穂積さんが見た勝負のポイントとは――。(全2回の2回目/前編へ)
終盤でも勝負を急がなかった寺地拳四朗の「巧さ」
試合は10回を終えたというのに、勝敗がどちらに転ぶのかまったく分からなかった。長谷川さんはわずかな変化も見逃さないよう、注意深くリングを見つめていた。
11回を迎えるにあたり、リングサイドのリポーターから赤コーナー(寺地)の様子が伝わってくる。これを受けて実況アナウンサーは「打ち合うということですね」と解釈した。長谷川さんはこう考えた。
「それを聞いて寺地選手はゴングと同時に打ち合うのかなと思ったんです。ところがいざゴングが鳴るとガンガンいかずに中間距離でジャブを突いて脚を使った。1分半くらいしてから徐々に前に出て、打ち合いに持っていった。ここがね、寺地選手の巧さだと感じたんですよ。これがもしラウンドの最初から打ち合って、途中から脚を使ったとしたら、阿久井選手が前に出てきてポイントを取ったかもしれない。阿久井選手にしたら最初から打ち合ってくれたほうが“乗れた”と思うんです。このあたりが数々の強豪選手と対戦してきた寺地選手の巧さなのかなと」
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寺地陣営はポイントで勝っているとは計算していなかった。実際にスコアは阿久井がわずかにリードしていた。それでもなお焦らず、いたずらに勝負を急がなかった。まだチャンスを作ることができると考えていたのだ。
11回、長谷川さんはこのシーンにも鋭く反応した。