- #1
- #2
ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「マシンガンとライフルの対決」寺地拳四朗とユーリ阿久井政悟の“歴史的名勝負”「じつは11回にあった」異変…長谷川穂積が察知した“壮絶KOの予兆”
posted2025/03/18 17:35

歴史的な名勝負となった寺地拳四朗とユーリ阿久井政悟によるフライ級2団体統一戦。長谷川穂積さんが語る「勝負を分けたポイント」とは
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
寺地拳四朗(BMB)とユーリ阿久井政悟(倉敷守安)によるフライ級チャンピオン対決は期待に違わぬ好勝負となった。3月13日、両国国技館で行われたフライ級2団体統一戦は、WBC王者の寺地が最終回にWBA王者の阿久井を追い詰め、劇的な12回1分31秒TKO勝ち。勝負の綾はどこにあったのか、勝敗を分けた要因は何か――。元3階級制覇王者の長谷川穂積さんが解説した。(全2回の1回目/後編へ)
両者のジャブは「マシンガンとライフル」
史上3度目となる日本人チャンピオンによる王座統一戦は、実績で上回る寺地が有利という見方が一般的だった。長谷川さんの見立ても「寺地選手が少し有利かなと思っていた」。ただし、一筋縄ではいかない試合になるとも予想していた。
「まずジャブの差し合いに注目していました。この2選手はともにジャブのスペシャリスト。寺地選手のジャブは手数が多く、言ってみればマシンガンです。相手が盾を持っているとして、そこにマシンガンでダダダダダッと撃っていく。最初は盾が弾を弾くんですけど、少しずつ穴が開いて、さらに弾が当たって穴は広がり、最終的に大きな穴ができる。阿久井選手は数こそ多くないけどライフルのようなジャブで、こちらも盾に穴を開けていく。そこに力強い右ストレートが入っていく。どっちが先に盾に穴を開けるか。そういう勝負になると見ていました」
試合が始まってすぐに感じたのは阿久井の「覚悟」だった。
ADVERTISEMENT
「最初から右ストレートを、覚悟を持って打っているように感じました。今までの防衛戦とは違って“挑戦者”として倒しにいっているような覚悟です。コンディションも最高でした。寺地選手には余裕を感じました。自信があるんですよね。そこに自分の想像を超えるジャブ、右ストレートが飛んできた。寺地選手はだいたいの戦い方のイメージがあったと思うんです。そこに予想以上の相手の覚悟を感じて、練習前に作り上げた気持ちをもう一度作り直さないといけなくなった。これをリングの上でやるのはけっこう大変だったと思います」