「感動しました」元世界王者・飯田覚士も開口一番、唸った！ 寺地拳四朗vs.ユーリ阿久井政悟はなぜボクシング史に残る”極上の名勝負”となったのか 

「あの左ジャブを見ただけで、この試合にどれだけ懸けているか十分すぎるほどに伝わってきました。拳四朗選手の反応が遅れるほど、強く、鋭い。リズムも一本調子じゃなくて、ジャブを打つぞ打つぞと見せかけてポンと放ったり、逆にいきなり右を放ったり、上下に散らしたりと工夫をしていました。相手をイメージしながら練習で相当打ち込んできたんでしょうね。阿久井選手の武器はやはり右ストレートなんですが、そればかりにならずアッパー、フックを混ぜて角度も変えていく。相手のリズムを狂わせ、自分のリズムに持っていこうとしていましたよね。それもこれも磨き上げたジャブがあるから、拳四朗選手は相手の右をしっかり見ることができない。まずあの鋭いジャブに反応しなきゃという思いがあったからではないでしょうか」

　ジャッジの採点を見ると1ラウンドは阿久井を3者全員が支持しているが、2ラウンドは負けじとジャブをヒットさせた寺地を支持している。ラウンドが進んでも一進一退の攻防が続くなか、前半戦は阿久井ペースだったというのが飯田の見解だ。

前半は阿久井（右）のペースで試合が進んだ　©︎Naoki Kitagawa

「1ラウンド、40秒ほど経過したあたりでジャブの差し合いにおいて阿久井選手が後ろにフラフラと後退したシーンがあったんですよ。相手は初回から飛ばしてきているし、これならいずれ相打ちでも勝てるなという感触が拳四朗選手にあったんじゃないですかね。だから足を使うでも、（距離を）つぶしにいくでもない。結局、阿久井選手の戦い方に付き合っちゃっている。どこかでカウンターを取れる、一発当たれば必ず突破口になる。そう思っているような戦い方でした。過去のスパーリングで圧倒したと聞く経験も、頭にはあったとは思います。結果的にどっちつかずというか、フワッとした感じが続きました」

拳四朗の得意なパターンを阿久井が…

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　阿久井とすれば、意図的ではなかったにしても理想的な形になった。ラウンドを重ねながら“これなら行ける”という自信が自然と体内からにじみ出ていることに飯田は気づく。

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