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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「感動しました」元世界王者・飯田覚士も開口一番、唸った! 寺地拳四朗vs.ユーリ阿久井政悟はなぜボクシング史に残る”極上の名勝負”となったのか
posted2025/03/17 17:00

WBC世界フライ級王者・寺地拳四朗(左)とWBA世界フライ級王者・ユーリ阿久井政悟の日本人同士による王者統一戦は史上稀にみる大激戦となった
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
戦前の予想は「寺地の優位」
これぞボクシング、これぞ王座統一戦。
会場にいた一人の目撃者として見届けた後も、胸のなかに湧き上がる興奮が鎮まることがない。
さすが寺地拳四朗、さすがユーリ阿久井政悟。
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名勝負というものは2人の“共同作品”でなければその条件を満たさない。自己研鑽と相手へのリスペクトを載せた両者の拳が交わり、化学反応を引き起こしてボクシングへの高みへと昇っていく。2人の「対話」には確かに、明らかにそれがあった。
3月13日、両国国技館で開催されたトリプル世界タイトルマッチのメーン舞台。WBC世界フライ級王者・寺地、WBA同級王者・阿久井による史上3例目となる日本人王者同士の統一戦は、まさに一瞬たりとも目の離せない大激戦となった。この原稿の前段部分に、敢えて結果は記さない。理論派のボクシング解説者として知られ、WOWOW「エキサイトマッチ」でもお馴染みの元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士が経営するボクシング塾「ボックスファイ」を今回も訪ねた。開口一番「感動しました」の一言。数えきれないほど試合を観てきた飯田でさえ、また余韻に浸っていた。
飯田の戦前予想は、寺地の優位であった。過去16度にのぼる世界戦のキャリアと、人並外れたポテンシャルに加えて33歳ながらまだまだ底を見せていない進化の途中であることも背景にある。
「前回(クリストファー・)ロサレス選手から手堅い形でフライ級のベルトを獲って、減量にもまだ余裕があるという話でしたからパワーもつけてくるはず。どんな変化を見ることができるかという期待感もありました。ジャブの差し合いから始まり、そこから少しずつ拳四朗選手が上回って突き放していければ中盤以降にKOもあるんじゃないか、という見立てではありました。対する阿久井選手はアマチュアで鍛え上げてきて、ジャブ、ワンツーを主体にしたボクシングをプロに入ってからも磨き上げてきています。フライ級でずっと戦ってきた阿久井選手と、フライ級ではまだ2戦目の拳四朗選手。ここがどう出るかというのも気になるポイントではありました」
前半戦は阿久井ペース
注目の立ち上がり。最初に目を引いたのは、寺地の「変化」よりも阿久井の「練磨」であった。飯田は大きく目を見開いて言う。