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「背中がぶち破れそうな衝撃」豪腕バレロのボディで「水を吐き出しました」…“異次元の怪物”に挑んだ嶋田雄大の証言「パッキャオ戦を見てみたかった」
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/11 12:22

2008年6月12日、日本武道館でWBA世界スーパーフェザー級王者エドウィン・バレロと拳を交える挑戦者の嶋田雄大
「パッキャオとの対戦を見てみたかった」
その長いキャリアを通しても、バレロは別格の存在だった。嶋田はそう強く感じている。
「モーゼス戦は2ラウンドに足を滑らせて肉離れ、力を出せずにもどかしい敗戦となりました。それでもモーゼスは『届く』という感じがしましたけど、正直、バレロはもう1回やっても勝てるという気がまったくしなかった。一発当たればとは思いますけど……強かったですね。パンチもドーンという感じに見えて引きが速いんですよね。ピッピッピッって感じで」
バレロはこの後、アメリカで再デビューし、マニー・パッキャオらスター選手との対戦が期待されながら叶わず、薬物やアルコールに溺れて自ら破滅の道を歩み、2010年4月、28歳の若さで生涯を閉じた。バレロとパッキャオ、嶋田にはともに思い入れがあった。
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「僕は日本チャンピオンだった2003年、スーパースターになる前のパッキャオとロサンゼルスでスパーリングをしてるんです。その年の11月ですね、パッキャオがマルコ・アントニオ・バレラを下してガーッと上がっていったのは。パッキャオはめちゃめちゃパンチが速かったですよ。バレロと同じように次元の違いを感じました。異次元の2人の対戦……見てみたかったですけどね」
嶋田は現在、新潟県十日町市で大翔ジムを運営、新潟から世界を目指し、後進の指導にあたっている。バレロと拳を交えた経験が大きな財産となっていることは言うまでもないだろう。
