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「28歳で死去…破滅した天才ボクサー」“27戦27勝27KO”エドウィン・バレロとは何者だったのか?「映像と全然違う」対戦者が語る“本当の実力”
posted2025/03/11 12:20

2010年に28歳の若さでこの世を去ったエドウィン・バレロ。日本を離れて以降は、薬物とアルコールの濫用が伝えられていた
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
「全試合KO勝ちの怪物」エドウィン・バレロとは何者か
2010年4月、遠くベネズエラから衝撃的なニュースが飛び込んできた。WBC世界ライト級王者のエドウィン・バレロが妻を殺害して逮捕され、留置場で自ら命を絶ったという。プロボクサーとして全試合KO勝利という完璧な戦績を刻み、さらなる強豪との対戦も望まれていた豪腕の、あまりにも凄惨で悲劇的な最期だった。
デビューから12連続KO勝ちを記録、母国ベネズエラからアメリカ進出をはたしたバレロのキャリアが暗転したのは04年のことだった。MRI検査で脳から出血が確認され、アメリカ国内でのライセンス停止処分を受けたのだ。過去に起こしたバイク事故で脳の手術を受けていたことが関係していた。アメリカでスターへの階段を登り始める矢先の悪夢だった。
そんなバレロに日本の帝拳プロモーションが救いの手を差し伸べる。バレロは05年に家族と来日、地球の裏側に主戦場を置いた。同年9月、日本デビュー戦は「バレロ相手に1ラウンドでKOされなかったら100万円」という異例の賞金マッチとして対戦相手が募集され、日本ランカーの阪東ヒーローが手を挙げた。会場が異様な雰囲気に包まれる中、バレロは公約通り阪東を1ラウンドで叩きのめし、我々の度肝を抜いてみせた。
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06年8月、バレロはパナマに乗り込んでWBAスーパーフェザー級王者、ビセンテ・モスケラから世界タイトルを奪取。そして07年5月、2度目の防衛戦で挑戦者に迎えたのが本望信人だった。
「なかなか世界戦が決まらなくて…」挑戦者の苦悩
本望は日本同級王座を8度防衛後に返上し、その後、東洋太平洋王者にもなった国内の実力者だった。現在47歳、さいたま市内で本望ボクシングジムの会長として手腕を振るう本望が当時を振り返る。