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米航空機事故で犠牲になったフィギュア世界王者夫婦が一人息子に遺した“最後のメッセージ”…シシコワ&ナウモフの功績を振り返る
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田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2025/02/04 11:04

1月30日、航空機事故によって亡くなった元ペア世界チャンピオンのエフゲニア・シシコワさんとヴァジム・ナウモフさん
マリニンと「境遇が似ているのでよく話すんです」
2020年3月には、パンデミックでロックダウンされる前の最後の大会となったタリン世界ジュニア選手権に出場。結果は米国男子3人中最高位の5位で、3歳年下のイリア・マリニンはこの大会で16位だった。
「僕もイリアも育った境遇が似ているので、よく話をするんです。どちらも両親がコーチだから、良いこともたくさんあるけど、時には愚痴をこぼしあったりとか(笑)」
タリンのミックスゾーンで、父親にも母親にも良く似たマキシムは笑顔でそう語った。
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コーチとして横にいたヴァジムに「幕張世界選手権、現場で見ていました。特にサンサーンスのSPが好きで」と言うと、「ものすごーく昔のことだったような気がします」と言いながらも、嬉しそうな笑顔を見せた。
息子に遺していた“最後のメッセージ”
マキシムはこのウィチタの全米選手権で総合4位になり、四大陸選手権への出場権を手にした。両親は合宿の指導でウィチタに残り、本人は大会終了翌日に友人たちと帰途についたという。
ヴァジムがマキシムのSNSに「SP7位から、総合で表彰台に上がったマキシムのことを、僕たちは誇りに思っています。(筆者注:全米選手権では4位まで表彰される)」と書きこんだのは、このコラムを執筆している今からわずか6日前のことである。それが両親から息子マキシムへの最後のメッセージとなってしまった。
マキシム・ナウモフは当然ながら、2月に韓国で開催される四大陸選手権出場を辞退することが発表された。現在、米国では彼を始めとする残された遺族への寄付活動が行われている。