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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「ハワイで水着になりたくて…」体重90キロ看護師がダイエット目的で始めたボクシングで人生激変…アマ日本代表→30歳でプロボクサー転身
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byWataru Sato
posted2024/12/30 11:04
先日、女子スーパーライト級(63.5kg以下)でプロデビューを飾った津端ありさ(31歳)。ダイエット目的で始めたボクシングにのめり込んだ
当初の目的は果たし、もうアマチュアのボクシングジムに通う必要はなかったものの、足が遠のくことはなかった。看護師の仕事を終えた後、ジムでミットを持つトレーナーに追い込んでもらうボクシングの練習は性に合っていた。
しばらくして、ジムの会長に勧められたスパーリング大会に出場すると、次はリングで拳を交える楽しさを覚えた。思った以上にアマチュア経験者と渡り合え、手応えをつかんだ。すっかり引き締まった体型になっていた翌年の26歳からは本格的に競技に取り組み、ボクシング歴1年足らずで2019年の全日本女子選手権を制覇。瞬く間に日本代表に選ばれた。女子中量級の層が薄いことを差し引いても、トントン拍子に進んでいた。
東京五輪の開会式に登場
2021年の夏には東京五輪の開会式に出演し、一躍注目を浴びる。白いトレーニングウエアに身を包んで登場し、黙々とランニングマシンで走っていた女性を覚えている人もいるのではないか。コロナ禍の影響で東京五輪の出場権を懸けた世界最終予選が中止となり、ラストチャンスの場を失った悲運のボクサー。パンデミックのさなかに看護師だったこともあり、より話題を集めた。
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『看護師ボクサー』として知名度が上がり、メリットもあった。アマチュアトップレベルのコーチに目をかけてもらい、指導を受ける機会も得た。ただ、プレッシャーも感じていたのだ。
2021年秋からはパリ五輪を目指し、再スタートを切る。東京五輪前からボクシングに注力するため、総合病院からクリニックに転職し、勤務形態は常勤から非常勤へ。以前にも増して練習に打ち込んだ。
「ボクシングに多くの時間を割くようになったのですが、なかなか結果を残せなくて。負けるたびに課題を見つけて、取り組んでいたんですけどね。アマ時代のウェルター級(66kg以下)は国内にほとんど選手がいなかったこともあり、日本代表としてすぐに国際大会に派遣され、そこでほとんど勝ち星を挙げられなかったんです」
快活に話す津端も当時のことを思い返すと、言葉を詰まらせる。少し間を置いてから、静かに口を開いた。
「ボクシングを楽しくできているようで、できていなかったんです。身体的な疲労よりも精神的な疲れがありました」