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「私にとってあの子は特別」憎しみを向けられても…中野たむが語る“闇落ちレスラー”上谷沙弥への本音「ダンプ松本じゃなくて、長与千種にならなきゃ」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/12/24 11:07
スターダムの“赤いベルトの王者”中野たむ。12月29日、両国国技館で因縁の上谷沙弥の挑戦を受ける
「ここまで昇りつめることができたのはスターダムという場所があったから。その恩を返していきたい。だから引退を止めて、スターダムを守ろうという、より強い気持ちになれた。私は(刀羅)ナツコとの試合でケガをしたけれどナツコのせいにはしていない。むしろ、あのケガがあったからこそ、ナツコと正面から向き合えた。上谷は逃げてるんじゃないですか。ケガのこともQQ(クイーンズ・クエスト)のことも。やっぱりどこか弱くて、もろい。赤いベルト、そんな甘くないよ、と思います」
「ダンプ松本じゃなくて、長与千種にならなきゃ」
上谷の本当の気持ちはわからない。だが、中野はどんな思いも受け止めるつもりでいるという。
「そもそも、プロレスラーになりたくなかったって話ですか(笑)。私に人生狂わされたってことですね。じゃあ責任取るしかないですね。私にとって、上谷って特別なんです。プロレスを始めさせちゃった負い目がずっとある。プロテストの時、過呼吸になっている姿を見た。アイドルになりたかっただけなのに、痛くて辛くて、本当に申し訳ないな、という気持ちがあった。でも。始めちゃったんだから、スターになってもらわないと。プロレスラーとして成功できなかったら、私は上谷を一生養わないといけない。白いベルトを取られたけど、そこから最多防衛も達成して『ああ、よかった』と思えたのに……。全部ぶち壊した。また、振り出しに戻っちゃいましたね」
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中野は誰よりも上谷を高く評価している。だからこそ、今の状況が歯がゆくて仕方ないという。
「上谷はもっと行けるよ。上谷沙弥はもっと行かなきゃいけない人でしょう。もう一つ殻を破れていない気がする。あんなに兼ね備えているのに。何かが足りないというか、方向が違うよねという感じですよね。本当の上谷はもっともっとすごいと思っています。『極悪女王』で言ったら、上谷はダンプ松本じゃなくて、長与千種にならなきゃいけない。みんななりたいんですよ。私もなりたかったけれど、長与千種になれなかったんです」
憎しみを向けられている相手に対して、こんな言葉も口にした。
「上谷はすごく繊細な子だから。大丈夫かなって、心配もちょっとあります」