フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「ユマの演技は正統派」振付師がプログラムに込めた願い…鍵山優真のスケートはなぜ特別なのか? GPファイナルで証明した“マリニンとの距離”
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田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2024/12/19 11:02

GPファイナルで2位となった鍵山優真。振付師のローリー・ニコル氏に、プログラムに込めた思いなどを聞いた
ニコルが解説する鍵山の「滑りの魔法」
身体全体の関節を伸びやかに使って、自由自在に体重移動をする。両足滑走がほとんどなく、ジャンプ前の滑走でもクロスオーバーの数が驚くほど少ない。まるでブレードが氷に吸い付いているかのような鍵山の滑りを、ニコルは「astounding mastery of the edge/驚異的なエッジさばき」と形容する。
「でもこれは派手なネオンサインがついたような作品ではないので、リスクはあります。氷の上のブレードの音に注意をはらい、エッジが創り上げる動きのニュアンスを理解する深い知識が必要です。彼のまるで飛行するような滑りの魔法を感じ取ってもらえたらと願っています」とニコル。
「ユマの演技は正統派」
彼女がこれまで手塩にかけて育てた選手たち、元世界チャンピオンのパトリック・チャンや、現在鍵山のコーチを務めるカロリナ・コストナーはスケーティングがうまい手本として未だによく名前があがるが、それは偶然ではない。ニコルにとって、スケートにおける芸術性とは必ずブレードを通して氷の上から伝わってくるものでなくてはならないのだ。
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残念ながらこの日の鍵山のSPは冒頭のサルコウで転倒があり、コンポーネンツの得点も8点台後半におさえられた。ノーミスで滑り切っていたなら、少なくともスケーティングスキルは9点台半ばは出ていただろう。
「ユマの演技は正統派であり、同時にとても複雑です。でも日本には伝統的に、繊細な動きでニュアンスを伝える文化があるでしょう」日本の庭園や焼き物などにも造詣の深いニコルは、そう説明する。