核心にシュートを!BACK NUMBER
「彼がキャプテンを務めたのは特別なこと」トム・ホーバスHCが「最後の代表活動」比江島慎(34歳)にかけた言葉の真意「あれは素敵な瞬間でした」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2025/01/11 11:09
代表での最後の試合となり得るアジア杯予選ではキャプテンも務めた34歳の比江島慎。ホーバスHCが「特別」と評した、ベテランへの想いとは?
そうではない。ベテランや一流の選手は、シュートタッチが悪い時に、他のプレーを上手に取り入れる。シュートタッチの良し悪しに左右されないダンクシュートやレイアップをする機会を増やしたり、パスなどで周りを活かすことで、チームに貢献するのだ。
あの日の比江島も、まさにそうだった。
昨シーズンのBリーグでは44%の高確率で決め、ベスト3P成功率賞に輝いた比江島だが、グアム戦では6本の3Pを放ち、決められたのはわずか1本。成功率は16.7%だった。
ADVERTISEMENT
そんな日に、別の選択をできるのが、Bリーグの数々のタイトルを手にしてきたエースである。
第4Qの残り3分7秒、ファールを3つ犯していたため、しばらくベンチに下がっていた比江島がようやくコートに戻ってきた。待望の瞬間だった。というのも、最大19点もつけていた点差を縮められ、同点にされたタイミングだったからだ。グアムの番狂わせを望む、陽気なファンたちの熱気が会場には充満していた。
「僕はとりあえず、ペイントエリア内にアタックしようという考えでした。3Pはあまりタッチが良くなかったので、自分が(相手選手を)引きつけて……ということだけ考えました」
比江島は最初の攻撃でジョシュ・ホーキンソンへパスを送り、彼のバスケットカウントとなる得点をアシストした。このプレーにより、リードは3点に広がった。その後、相手に2点を返されたが、ひるまない。今度は攻撃の起点として相手の守備を崩して、ホーキンソンへパスを出し、そこからのパスを受けた西田優大の3Pシュートが決まり、再び点差が広がった。
「あぁ、代表で戦えた時間は楽しかったなぁ」
そこからは両チームが取り合いながら進み、残り時間は9.9秒となった。ここでフリースローを得たのが比江島だった。スコアは81-78の3点差だ。
「自分のなかで、3Pとフリースローは別だと考えているので。だから、調子が悪いから打ちたくなかったとかいう感覚は一切なかったですね」
比江島はそう振り返る。実は、1本目のフリースローを打つ前から、ずっとつぶやいていた。
(これで最後なのかなぁ)
(あぁ、代表で戦えた時間は楽しかったなぁ)
そんな言葉をつぶやきながら、涼しげに最初の1本目を決めた。そして、続く2本目を打つために審判からボールが渡された。
比江島はそこで、一瞬だけ視線を上に向けた。母が見守ってくれている天に合図を送るためだった。
「あの時は気持ちが高まるとか、力が入るなんてことはなかったです。あれも、僕にとってはおまじないに近いのかもしれないですね」