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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「ちょっと疲れたな」順調だったイタリア生活、でも母には伝わっていた“危険なサイン”…大塚達宣(24歳)を救った母の助言と石川祐希の存在
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byPA Images/AFLO
posted2024/12/08 11:05
今季からイタリア・セリエAのミラノでプレーする大塚達宣(24歳)。実力者が揃う中で、激しいレギュラー争いに身を置いている
セリエA開幕前に行われたイエージ・カップには、石川が所属するペルージャも参戦していた。対戦は実現しなかったが、そこで会った石川の姿も大塚に刺激を与えた。
「『ほんまに祐希さんがいるこのリーグに来たんや』って感じがして(笑)。ペルージャの試合をちょっと見たんですけど、コートでの立ち居振る舞いが、代表の時とはまた違って、昨シーズンまでスマホで観ていた祐希さんって感じだった。勝手な僕の印象ですけど、代表の時より一段体での表現が多いのかなって。
会った時には『元気そうでよかった』と言ってくれて。祐希さんも新しいチームでポジションをまた取りに行くところから始まるので、『お互い頑張ろうね』って話をしました。僕はちょうど疲れが出たり、いろんな感情の波があった時期だったので、すごく刺激になったし、『頑張ろう』ともう一個火がつきました」
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強くなるために、イタリアに来た。その思いを新たにした。
ティリさんと磨いたサーブレシーブ
パリ五輪での大塚は、スタメンこそなかったが、先発した石川や高橋藍に代わり重要な場面でコートに入ることが多かった。予選ラウンド第3戦のアメリカ戦は、1セットを取れば準々決勝進出が決まる状況だったが、1、2セットを連取され崖っぷちに。だが第3セットのスタートから出場した大塚が、いつものようにポジティブなエネルギーをコートに注入して流れを変え、チームを救った。
「東京五輪が終わってからパリまで、ずっと同じような立ち位置というか、途中から入ることが多かったですけど、でも年々自分の中で、できることは増えてきているなという実感はありました」
大塚自身が一番変化を感じていたのがサーブレシーブだ。
「パナソニックの3シーズンで、サーブレシーブが一番改善できたと思います。(監督のロラン・)ティリさんに付きっきりでずっと教えてもらっていましたから」
パリ五輪では激戦となったイタリア戦の終盤、疲れの見えてきた石川と交代して後衛で起用された。それだけ日本代表のフィリップ・ブラン監督も大塚のサーブレシーブと守備を信頼していたということだ。
ミラノでも、アウトサイドのポジションをつかむにはまず守備面からだと考えている。
「スタートを取りにいく、という気持ちはやっぱり強いです。強くなるためにこっちに来たので。たとえ時間がかかっても。いろんな選手からたくさんのことを盗んで、どんどん強くなって、出る機会を増やしていきたい。代表の時よりも、今のほうがそういう気持ちは強いし、そこは大事にしていきたい」
そう熱く語ってから、「あ、語弊がありますね」と補足した。
「もちろん代表の時も思っていましたよ。ただ、代表の時と同じ立ち位置のままだったら嫌だな、という気持ちが強いという話です。確かに途中出場で入るのは、それだけ頼りにされているということなのかもしれないですけど、それだけじゃ満足できない自分がいる。最近の代表でもそうですし、こっちでもそう。コートに入って長くやりたいという気持ちは年々強くなっています」