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球体とリズムBACK NUMBER
「親友の死、灰にされる母国…つらすぎる」W杯予選で韓国相手に健闘…“J1加入直前だった”パレスチナ代表MFに直撃「ソンの称賛に感動したよ」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2024/12/07 11:00
アジア杯でのモハメド・ラシド。パレスチナ代表選手が語る母国の惨状と、W杯アジア最終予選での戦いぶり、日本サッカーとの縁とは
パレスチナでもインフラが破壊されていないところでは、代表戦をテレビで観戦できるという。悲惨な日々を送っている人々にとって、代表チームはいくばくかの希望を見出せる数少ない対象だ。ラシドのもとにも、多くの同胞からメッセージが寄せられている。ひとときでもいいから、現実を忘れさせてほしいと──。
「僕はヨルダン川西岸地区で生まれ、ガザには行ったことがない。でもそうしたメッセージは映像や写真と一緒に送られてくることが多いから、その時の状況を知ることはできる。これ以上ないほどに凄惨な光景だよ。僕が生まれてから、一番ひどい。ガザには水がないので、人々は海水を汲んできて沸騰させて飲んでいるくらいだ。そういうことを知ると、胸が張り裂けそうになる。でもそれもまた、僕らは力に変えている」
韓国相手に再び引き分けられた要因とは
実際、昨年10月にイスラエルとハマスの紛争が起きて以来、パレスチナ代表は今年1月のアジアカップで同代表史上初の決勝トーナメント進出を果たし(ラウンド16でカタールに1-2と敗北)、前述したように初のW杯最終予選にも駒を進めている。
9月に行われた韓国とのアウェー戦をスコアレスドローで終え、グループ最大の強敵の敵地から勝ち点を持ち帰る好スタートを切った。その後は苦戦が続いていたが、直近のホーム(ヨルダンの首都アンマンで開催)での韓国戦で再び引き分け(1-1)、相手の連勝を4で止めた。
「ウェッサム・アブ・アリやオデイ・ダバクといった欧州のクラブやエジプトの名門でプレーする選手の台頭もあり、チームが力をつけていたのは事実だ。そこにさらなるモチベーションが加わり、韓国戦のような好結果に繋がっている。世界で最も愛されているスポーツ、フットボールの国際試合で韓国のような強豪と良い勝負をすれば、ニュースが世界中を駆け巡る。つまりパレスチナのことを、少しでも多くの人に知ってもらえるようになる。僕らはそのために戦っているんだ」
ソン・フンミンが称えたパレスチナのハードワーク
パレスチナ代表はトレーニングキャンプができないばかりか、自治区内のリーグも中止されており、選手たちは自主的に練習し、ラシド(インドネシアのペルセバヤ・スラバヤに所属)ら国外でプレーする選手たちは、試合の数日前に合流しているという。そんなチームがW杯に10大会連続で出場しているアジアの盟主のひとつ、韓国と公式戦で2度も引き分けたことは、快挙と言っていい。
11月19日の試合後には、韓国の主将ソン・フンミンが次のように相手を称えている。