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「復帰を決めた恩師からのLINE」引退も考えた樋口新葉が明かす…かつて“天才少女”と呼ばれた23歳のGPシリーズ初優勝「成長を感じました」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2024/10/25 17:35

「復帰を決めた恩師からのLINE」引退も考えた樋口新葉が明かす…かつて“天才少女”と呼ばれた23歳のGPシリーズ初優勝「成長を感じました」<Number Web> photograph by AFLO

スケートアメリカにて自身初のGPシリーズ制覇となった樋口新葉

「練習では3+3のコンビネーションが良かったので、自分でもどういうミスで(ルッツの)後ろのトリプルが跳べなかったのかわからないんですけど、その後、気持ちを引きずらずに最後まで滑りきれたのが、本当に今までの成長を感じました」と演技を振り返った。

「表彰台決定です」「えっ?えっ?」

 演技後、ミックスゾーンで樋口が記者陣に対応しているうちに、SP3位だった渡辺倫果の演技が終了し、樋口の方が総合スコアが上であることが判明。記者に「表彰台決定です」と告げられた瞬間、「えっ? えっ?」と驚きの声をあげて絶句した。

 さらに続いてSP2位だったアメリカのブレイディ・テネル、SP1位だったイザボー・レヴィトともジャンプミスなどが出て、樋口の初優勝が決まった。初めて表彰台の頂点に立ち、聞いた「君が代」の感想を聞かれると、

「全然慣れてなかったので……いつもおこぼれみたいな感じで君が代を聞いたりしていたので、自分の結果で表彰台の一番上に乗ったりというのは新鮮でした」と笑顔を見せた。

樋口を氷上に戻した“コーチからのLINE”

 北京五輪の翌シーズンは怪我で休養し、昨シーズン復帰したものの全日本12位と厳しい結果になり、競技引退も頭をよぎっていたという。

「怪我もあって、メンタルがどうにもならない状態だったので、休養を選んだんですけど……休養というよりそのまま消えようと思っていたので、戻ってきたのが(自分でも)びっくり」と語る。そんな彼女を氷の上に戻したのは、子供の頃から指導を受けてきた岡島功治コーチからの連絡だったという。

「先生から、『いつから練習来ますか?』とLINEがきた。とりあえずリンクに行ってみて、ちょくちょく先生から、『明日は練習来ますか?』とか……一緒に練習している子たちからも、『いつリンクに来ますか』と連絡をもらっていたので、リンクに行かなくちゃいけなくなって」と笑いながら樋口は語る。

「最初はしぶしぶ、何のモチベーションもなくやっていたんですけど、そこから面白いかもと思えるようになってきて……」

【次ページ】 今季の目標は全日本選手権

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