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「誰かにとっての憧れの存在になりたい!」ブラインドサッカー®川村怜の人生の目的。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2024/10/29 17:00

「誰かにとっての憧れの存在になりたい!」ブラインドサッカー®川村怜の人生の目的。<Number Web>

 川村がハンデを抱えているかどうかなど関係ない。サッカー少年が現在のサッカー日本代表として活躍する久保建英や三笘薫に憧れるのと同じように、「ブラインドサッカーの川村怜選手に憧れています」と言ってもらえるような選手になりたいと考えている。

 だから、川村にとって忘れられない時間となったのだった。

 ただ、一つだけ心残りがあった。

背中を押してくれた両親への想い

 当時は、コロナ禍にあった。だから、観客を会場に入れないままで試合が行なわれることになったのだ。川村は多くの観客の声援を受けながらプレーするのが大好きだ。観客がいないのはやはり、寂しかった。

 それだけではない。自身がブラインドサッカーに取り組むまでの間、そっと背中を押してくれた両親に、自分が世界最高の大会に出場している姿を見せられなかったことが、悲しかった。

 ただ、努力は裏切らなかった。

 35歳というベテランの年齢にさしかかって、両親の前で直接プレーするチャンスを得たのだ。

 還暦を過ぎた両親に自分の試合を見てもらうきっかけを作れたことで、ほんの少しであったかもしれないが、これまでの恩返しができたのではないかと考えている。

「無観客での試合では、残念ながら自分の姿を生では見せられなかったので。やはり、両親には世界の舞台で、その姿を見てもらいたかったんです! 二人ともすごく喜んでくれて、少しは恩返しできたんじゃないかなとは思っています」

みんながスポーツ観戦を楽しめる環境を作りたい

 川村は両親が見てくれる幸せを感じながらプレーしたからこそ、新たな目的ができた。

「ルールを知らないような競技に対しても、みなさんは声を出して、楽しんで応援してくれていました。きっと、スポーツにすごく関心があるからなのでしょうね。そして、選手に障がいがある、なしにも関わらず、みんながスポーツ観戦を楽しめる環境に感銘を受けました。だから、これからは日本でもそういう環境を作っていきたいですね」

 自分のプレーを見てくれる誰かにとっての『憧れの選手』になること。

 そして、ブラインドサッカー選手としてプレーしていたときに幸せだと感じられたような環境を、将来のために作っていくこと。

 川村には、2つの人生の目的が生まれた。

 これからは、かつての自分がサッカー選手に憧れたときのように、あるいは観客から応援してもらったときに感じられた喜びを誰かに感じてもらえるように、情熱に火をともして戦っていくつもりだ。

 川村は、11月2日から始まる第22回「アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」に、品川CC パペレシアルのエースとして、参加する。

「昨年度は決勝で負けてしまって準優勝だったからこそ、優勝したいという想いがすごく強いです。この大会では日本全国のブラインドサッカーのチームが、様々な会場で試合を行ないます。ぜひみなさんには会場に来てもらって、この競技の楽しさを体感してもらいたいです。そして、僕としてはそこで1人でも多くの方の心を動かすようなパフォーマンスを発揮したいと考えています」

 スポーツは筋書きのないドラマだ。思わぬ敗戦を喫することもある。しかし、今では人生の目的をしっかり持った川村は、新たに手にしたそれを胸に、これからも戦いを続けていく。

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