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「負けても魅力のある方で…」後輩選手からの本音…須崎優衣25歳が“まさかの敗戦”後に「私は幸せだな」五輪後に気づいた幸福感
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/09/05 06:00
パリ五輪では銅メダルを獲得したレスリングの須崎優衣
大きな喪失感も…なぜ「私は幸せだな」と思えたか?
「自分が思っている以上にみんなは須崎優衣という一人の人間を応援してくれていました。オリンピックチャンピオンの須崎優衣じゃなかったら価値がないのではないかと思っていましたが、一人の人間として応援して下さる方が本当に多いことに気づいて、私は幸せだなと思いました」
知らず知らずのうちに背負った連覇への使命感は、須崎から相応のエネルギーを削り取っていたに違いない。だが、負けたことで気づけた幸福感があるのもまた、五輪という大舞台ならではだった。
3位決定戦のマットに上がる直前には、グレコローマン77kg級で金メダルを獲ったばかりの日下尚(三恵海運)から「先輩、やってください!」と激励を受けた。2歳下の日下は須崎の勝利を見届け、「レスリング界を引っ張ってきてくれた先輩は、負けても魅力のある方で、僕の憧れです」と称えた。
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「この3年間、パリ五輪で金メダルを獲ることだけを考えて生きてきたので悔しい結果になってしまいましたが、また新たに4年後のロサンゼルス五輪、その先のブリスベン五輪で絶対に金メダルを獲ろうという約束を自分とかわすことができました。本当にかけがえのないパリ五輪になりました。この銅メダルがあってよかったと思える日が来るまで頑張り続けて、銅メダルを価値のあるものにしていきます」
日本に帰ったら何をしたいですか? 会見で聞かれると、「すぐに練習がしたいです」と答えた。
「私を信じて応援してくれる方々を喜ばせてあげられる日が来るまで頑張ろう。有観客の五輪で一緒に喜び合える日まで戦い続けようと思います」
4年後に向けてすでに整っている須崎優衣がいた。
須崎優衣Yui Susaki
1999年6月30日生、千葉県出身。'17年は48kg級で、'18、'22、'23年は50kg級で世界選手権制覇。東京五輪では金メダル獲得。対外国人選手94連勝を記録するもパリ五輪は初戦で敗れ銅。153cm。