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「そんなんだから、人が寄ってこねぇんだよ!」甲子園で敗れた“ある名門野球部”エースの青春…最後は「こんな仲間、どこにもいない」と言えたワケ
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![田口元義](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/-/img_75003d1c8e96afbf93ce622c330de78e8574.jpg)
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/28 06:00
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甲子園初戦で鶴岡東に敗れた聖光学院高。部員数100名を超え、県外選手も多い「野球強豪校」だが…?
比叡山延暦寺を開いた最澄が唐から持ち帰った言葉とされており、「一隅を照らす灯は、最初は小さくとも、それが百、千、万と増えれば国中を明るく照らす」と解釈されている。
一燈照隅が流れる聖光学院に「王様」や「俺様」は必要ない。しかし、新チームが発足し「一枚岩」をスローガンとするなか高野の存在は明らかに浮いており、選手たちは腫物に触るように接していたほどだった。
そんなチームメートの不満が爆発したのは、夏へ向けそれこそ一枚岩として結束すべき、3年生になろうとしていた春である。
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「そんなんだから、お前のところに人が寄ってこねぇんだよ!」
高野とともに投手陣を支えていた古宇田烈が、ストレートに言い放つ。
古宇田は高野とは対照的な選手だった。選手間でのミーティングでは、本人にとって耳が痛くなるような核心をズバズバと突きながら、自分は誰よりも厳しく追い込む。全員がそんな彼の姿を知っているからこそ、「古宇田に言われたら」と言動を見つめ直す。
ところが、高野はそこで釈然としない姿勢を取ってしまい、チームとの溝が決定的に深まってしまったのである。古宇田が嘆く。
「秋からの高野は、自分のためのピッチングをしていただけというか。打たれたり納得できなかったりすると態度に出ていましたし、人に当たることもあったんで。『ほかの選手がどういう想いでプレーしているのか』をわかってほしかったんで本人にそう言ったんですけど、まあ、3月、4月は険悪でしたね。
「お前が変わらないと…」チームメイトの言葉も届かず
厳しく促したのは古宇田だけではない。キャプテンの佐藤羅天も「今のままじゃダメだ。お前が変わらないとチームがよくならない」と訴えかけたが、暖簾に腕押し状態だった。
そして、高野は孤立した。
意地を張り、虚勢を押し通す。そんな格好悪い自分をさらけ出してしまっていることを、実は高野もわかっていたのだ。
ただ、あとには引けない、素直になれない自分がいたのだと、本音を打ち明ける。
「古宇田とか羅天からそう言われたときに、どうしていいかわからなくて。それで、ますます独りよがりになってしまいました」