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レスリング藤波朱理20歳が「カラオケで西野カナを熱唱」その理由が深すぎた…パリ五輪で注目を集めた“親友・鏡優翔とのW金メダル”ウラ話
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2024/08/18 17:03
パリ五輪で金メダルを獲得した藤波朱理(右)と鏡優翔は親友として支え合ってきた
3月上旬に鏡が肋骨を骨折したかと思うと、藤波は3月14日の練習で負傷し、左ひじ脱臼および内側側副靱帯断裂で手術。さらに鏡は5月に右ひざ内側側副靱帯を損傷した。
焦るなと言っても無理があるような本番直前のタイミング。しかもケガの度合いが2人とも決して軽いものではなかった。だからこそ2人は互いに励まし合いながら、厳しい時期を乗り越えようとした。
パリ五輪が始まる前、藤波は「優翔さんにはすごく仲良くしてもらっていて、(3月に左ひじの)けがをした時にもたくさんのメッセージを送ってくれました」と感謝していた。そして、鏡からのメッセージで心に響いた言葉を聞かれると、「『挫折した人にしか見られない景色がある』と言ってくださって、確かにそうだなと思いました」と語っていた。
藤波流の激励は「カラオケでの西野カナ熱唱動画」
鏡からのメッセージにエネルギーをもらった藤波が、鏡に“お返し”をしたのは、鏡が5月に右ひざを負傷した時だ。藤波は以前に自身がけがをした時、一緒にカラオケに行った友人が元気の出る歌を歌ってくれて感動したことを思い出し、カラオケ店に足を運んで同じ曲を熱唱。スマホで撮影した動画を鏡に送った。
「歌ったのは西野カナさんの“エブリシング・イズ・オッケー”みたいな歌詞の曲(※おそらく[Alright])。自分はすごく勇気をもらったので、優翔さんの力になるかなと思って、優翔さんに歌を歌いたいなと思ってカラオケに行きました」
鏡によればカラオケ動画メッセージの効果は絶大だったそうだ。
「けがをした時、朱理にはすぐに伝えたんですよ。そうしたら、朱理もつらい状況にいるのに、何日か後にいきなり動画が送られてきて、しかも歌の内容は“上を向いていこう”みたいな感じで……」
送られてきた動画には、曲名が分かるようにカラオケ画面がうつっており、藤波は背中を向けた状態で映っていた。
「でも、たまに朱理が振り返ってカメラ目線になって、わたしに訴えかけるように目線を送ってくるんです。笑っちゃいましたけど、元気が出ました。お笑いあり、感動ありみたいなメッセージ動画で、けっこう沁みましたね」
続けて鏡は、藤波が「心に響いたメッセージ」として挙げた言葉について、このように説明した。
「サントリーの入社式で、同期の新入社員がスピーチした言葉です。『神様はつらいことを乗り越えたすぐ後ろに、輝かしい景色を置いている』というようなことをスピーチしていたんです。これは刺さったなと思ったので、朱理に『(神様は)つらいことの後には素晴らしい景色を用意してるらしいよ』って言いました」