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「メダルじゃないんですか?」女子バレー主将・古賀紗理那が熱く語るパリ五輪の目標「恥ずかしいことじゃない、無謀だろと言われても…」

posted2024/07/31 11:02

 
「メダルじゃないんですか?」女子バレー主将・古賀紗理那が熱く語るパリ五輪の目標「恥ずかしいことじゃない、無謀だろと言われても…」<Number Web> photograph by FIVB

キャプテンとしてチームを牽引する古賀紗理那

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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 パリ五輪後の電撃引退を発表したバレーボール女子日本代表・古賀紗理那(28歳)は、主将として時に強い言葉でチームを鼓舞してきた。それは、ただひたすらに強さと勝利を求めてきたから。彼女が抱く最後の目標への熱き想いに迫った。
 発売中のNumber1101号[キャプテンの本懐]古賀紗理那「私の目標はメダル一択」より内容を一部抜粋してお届けします。

絶対にメダルを獲って「最高だったね」で終わりたい

 その夜、古賀紗理那は雄弁に語った。

 約1カ月後にはパリ五輪が開幕する6月29日。本番へ向け最後の国内合宿が行われるナショナルトレーニングセンターに、リザーブメンバーの山岸あかねを含む13人の選手と、眞鍋政義監督以下、全スタッフが集結した。ミーティングの議題は、パリ五輪出場という大きなミッションを成し遂げ、本番の大舞台ではどんな目標を掲げるか。

 まず眞鍋が全体に向け、前回の東京五輪を踏まえて「ベスト8を目指すなら1ステップ、ベスト4なら2ステップ、メダルを目指すならば3ステップ上がらなければならない」と述べる。そのうえで何を目指すか。監督が目標を与えるのではなく、全員をランダムに5つのグループに振り分け、話し合いをスタートさせた。古賀の席には山岸と、強化委員長の中村貴司、ストレングスコーチの木下恒司がいた。

 古賀の中では迷いなどない。むしろ全員が「メダル獲得」と積極的な意見を出すかと思いきや、周囲の反応を気にして、誰が話す? 誰から言う? という沈黙が続く。口火を切ったのは中村強化委員長だった。

「僕は女子バレーボールの強化委員長として、JOCに『メダル獲得が目標です』と伝えているからね」

 それならハッキリ言えばいい。しびれを切らした古賀が、前のめりに話し始めた。

「メダルじゃないんですか? 私の目標はメダル一択。メダルの色は問いません。でも絶対にメダルを獲って、最後に『このチーム、最高だったね』で終わりたくないですか? 私はそのイメージしかないです。メダル獲得って言うのは恥ずかしいですか? 私は全然恥ずかしいことじゃないと思います。たとえ無謀だろ、身の程をわきまえろと世間から言われたとしても関係ないじゃん、って私は思います」

 一気にまくしたてるうちに「自分でも止まらなくなった」と笑う。

「そもそも目標を設定すると言われた時から、メダルじゃないの? って思っていたから、何でみんな言葉にしないんだろうってむしろ不思議だったんです。メダルという目標に向けてチームみんなで頑張ったことって、絶対に残るから『私はそういうチームをつくりたいです』って、めっちゃ熱く語った。選挙かよ、と思うぐらい熱弁しちゃいました(笑)」

どんな言葉をかければ心を熱くできるか

 人見知りで、試合直後のコートインタビューやカメラが向けられた中で話すのは苦手。だが、試合中のベンチやコートの中では違う。勝つため、チームのためになることならば古賀はひたすらしゃべる。相手のディフェンスシフトに対してどんな攻撃が有効か。相手の傾向を見て攻め方や守り方を変えるべきではないか。「もともと(性格も主張も)強いほう」と自認する古賀が、より臆せず、言葉にして伝えることを重視するようになったのは、2022年に日本代表で主将を務めるようになってからだ。

 だが最初は自分でも感じるほどに「浮いていた」。よりよいパフォーマンスを出すために必要だと感じるから、時に厳しく指摘もする。その熱が、伝わるどころか空回りしていた。

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