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「長年キャッチャーやっていて良かったな」前半戦首位ターンの巨人・阿部慎之助監督が自慢話? “何をやってくるか分からない”阿部野球とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/26 11:02
前半戦を首位で折り返した巨人・阿部慎之助監督。その手腕の秘密とは?
この試合で今季初めて岡本を左翼に起用したこと、坂本に一軍復帰後初打点がついたこと、また中継ぎ陣の奮闘や大勢投手の完璧な投球内容などについての質問が続き、指揮官は1つ1つに答えていく。そして5回の丸佳浩外野手の好返球(1死一、二塁から右前安打で二塁走者を本塁で刺殺したプレー)に話が及んだ時だった。
その質問を遮るように阿部監督がこう語り出したのである。
「それよりも、度胸を据えてエンドランを外せたので。長年、キャッチャーやっていて良かったなと思いました」
見事にハマった自らの策。それに酔った自慢話をわざわざ?
この監督の言葉に番記者から「監督からのサイン?」と声が飛ぶと阿部監督は頷いた
「ベンチから。スリーツー(のフルカウントになるのは)承知で。きのう、岡田さんがね『走れ走れと言ってるのに走らない』って言ってたから。動いてくるならここかなって、自分勝手な勘で。岸田もナイスボール投げたしね。あそこが勝負の分かれ道というのか、境目だったんじゃないかなと思います」
こうピッチドアウトのサインを出した背景までも説明してみせたのである。
計算ずくの発言には必ず意図が
もちろんこれは単なる自慢話ではないのは明らかだ。試合直後に行われる囲み会見でも、この監督はかなり計算して発言をしている。
16日の阪神戦の勝利後には名前こそ出さなかったが、2度の三塁に走者を置いたチャンスで犠飛も打てず凡退し、8回の無死一塁で送りバントを失敗した門脇誠内野手を、同じように自分から切り出してこうバッサリ。
「気持ちが良くない勝ち。やるべきことが全くできていなかった。あんまり言いたくないけどさ。何が何でも! みたいなのが見えない」
この発言ももちろん報道を通じて本人に伝わることを意識してのものである。
自分の発言がどう報道され、周囲の関係者や選手、相手チームがそれをどう読むか。その影響は現役時代から嫌というほど経験してきている。だからこそそれを逆手に取る方法も百も承知だった。
そんな計算ずくの囲み取材での発言には必ず意図がある。だからこのピッチドアウトの内幕暴露の発言にも必ず何か狙いがあるはずなのである。
阿部監督の2つの考えとは?
そこで思い出したのが、キャンプの時の監督インタビューで語っていた「阿部野球とは如何なるものなのか?」という問いへの答えだった。