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「長年キャッチャーやっていて良かったな」前半戦首位ターンの巨人・阿部慎之助監督が自慢話? “何をやってくるか分からない”阿部野球とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/26 11:02
前半戦を首位で折り返した巨人・阿部慎之助監督。その手腕の秘密とは?
その時に阿部監督は2つの考えを語っている。
一つは相手の嫌がることをすること。
「自分たちがやられて嫌なことだったり、そういう作戦、選手起用、プレー、配球……そういうことを相手にすればいいだけですから。僕はそれが野球だと思うので!」
そしてもう一つは相手に考えさせること。
「とにかく相手に考えさせる。去年(23年シーズン)に関して言えば、こっちが逆に阪神に考えさせられちゃっただけです。阪神だって当たり前のことをやっているだけなんですけどね。でも、こっちが考えさせられちゃってね、どうにも太刀打ちできなかった。まさにそういうことだったと思います」
「巨人は何をやってくるか分からない」という心理
この阪神戦でのピッチドアウトなど、ベンチがリスクを背負ってイレギュラーな決断を下すこと、そしてそれが見事にハマればもちろん相手にとっては嫌なはずである。
そして岡田監督の発言まで引き合いに出して、決断の裏側を披露したことで、今度は相手ベンチに考えさせる種を蒔いた。
監督のひょんな発言や仕草、ベンチや選手の動き……そんな些細なものをきっかけに巨人は何をやってくるか分からない――対戦相手の監督、ベンチにそう思わせること、そこから色々と考えさせることで十分なのだ。そうやって考えさせることで、心理的優位に立つきっかけになればいい。
そういうことを計算した一つの布石の発言だったということだろう。
「もちろんね。僕はまだ1年目ですけど、長い間、監督されている方を相手にしてるのでね。なるほどな、と思うときもたくさんありますし、勉強しながら、キャッチャー目線でいつも見るようにはしているんですけど」
岡田監督の発言を利用して…
最後にこう付け加えたことも、岡田監督をコケにしたと思われかねない発言を軌道修正するために考えていた“用意されたコメント”のように聞こえた。