プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「長年キャッチャーやっていて良かったな」前半戦首位ターンの巨人・阿部慎之助監督が自慢話? “何をやってくるか分からない”阿部野球とは
posted2024/07/26 11:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
阿部野球とは何なのか?
オールスター戦までの前半戦89試合を、46勝38敗(5引き分け)の貯金8で首位ターンした巨人。開幕前の下馬評では阪神やDeNAなど昨年の上位チームに比べると、かなり低い評価が多かった。しかし前半戦終了時点とはいえ、この結果に改めて就任1年目の阿部慎之助監督の手腕を評価する声が上がるのは当然だろう。
そんな阿部野球の一端を垣間見たのは、7月17日の阪神戦だった。
この試合は4回に坂本勇人内野手の一軍復帰後初打点となる犠飛で2対2の同点に追いついたが、5回に先発の井上温大投手が捕まり再び1点のリードを許す。しかしその裏に巨人はエリエ・ヘルナンデス外野手と岡本和真内野手の連続タイムリーで逆転に成功した。
そして迎えた6回の阪神の攻撃だ。
先頭の大山悠輔内野手が左前安打。1死後に打席に坂本誠志郎捕手を迎えたカウント2ボール2ストライクという場面だった。
捕手出身・阿部監督の真骨頂
三塁側の阪神・岡田彰布監督が動いた。マウンドの泉圭輔投手がモーションを起こすと大山が走る。ヒットエンドランのサインが出たのだ。だが巨人バッテリーはこれを見透かしたように、岸田行倫捕手が立ち上がり外角に大きく外すピッチドアウト。打席の坂本はバットが届かずに空振り三振し、走った大山も岸田の送球で二塁タッチアウトとなって三振ゲッツーが成立した。
実はこのピッチドアウトのサイン、一塁ベンチの阿部監督から出されたものだったのである。
もちろん相手の動き、岡田監督の采配の傾向を察知し、予測し、思い切った決断ができるのが捕手出身の阿部監督の真骨頂であることは言うまでもない。
そういう意味ではこのピッチドアウトという決断が阿部野球の一つの真髄であることは間違いない。
「長年、キャッチャーやっていて良かったな」
ただ、もう一つ、阿部監督がどういう監督で、どういう野球を目指しているのかを感じたのは、試合後のメディア会見での発言だったのである。
中継テレビ局のインタビューが終わって番記者の囲み取材でのことだった。