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「年俸339万円だった右腕が…」中日ファンが思い入れる新星・松木平優太とは何者か?「両親と幼少期に別離」の境遇「夢はいつかおばあちゃんと…」 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2024/07/14 17:00

「年俸339万円だった右腕が…」中日ファンが思い入れる新星・松木平優太とは何者か?「両親と幼少期に別離」の境遇「夢はいつかおばあちゃんと…」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

先発抜擢のチャンスをものにして存分にアピールした中日・松木平

幼少期の辛い別れ

 松木平の名が注目されるのは、能力だけではない。境遇が人の心を惹きつけているのかもしれない。2歳で両親が離婚。ここまでならよくあるだろうが、インドネシア人の父とはそれきりで記憶にもほとんど残っていない。母は松木平が小学2年の時に病気で亡くなった。そこからは姉とともに母方の祖父母に育てられた。その祖父も高校生の時に他界。そして家庭の事情で祖母も千葉県内の老人施設へと移っていった。

 そんな経緯があり、松木平には「自分がしっかり稼げるようになって、おばあちゃんとお姉ちゃんといっしょに暮らしたい」という夢がある。こうした暗くなってしまいがちな話題も、松木平は包み隠さず、なおかつ明るい表情で明かす。「松木平マニア」が増えているのは、能力だけでなくその人柄があってのことだろう。

コロナ禍の高校時代

 大阪府堺市にある私立精華高校が松木平の母校だ。強豪ひしめく大阪において、過去に甲子園出場経験はない。昨年夏は府大会4回戦敗退。しかし今春は8強進出と、徐々に力を付け始めている新興勢力のひとつである。

 とはいえ松木平の在学中に目立った戦績はない。それどころか2003年2月24日生まれの松木平は、大学に進んでいればこの秋にドラフト指名を待つ4年生。最も思い出に残るはずの高校3年生は、新型コロナの感染拡大により「3密」や「外出自粛」が叫ばれていたころだった。春夏の甲子園も中止。野球部の練習そのものも大幅に活動を制限されていた。

 入学当初は野手だった松木平は、柔軟性のある投球フォームを買われて投手に挑戦。ふとしたきっかけで、中日スカウトの目に留まったようだ。独自大会は開催されたものの、スカウトの視察も制限されていた状況で、大きな転機となったのは「プロ志望高校生合同練習会」だった。

“トライアウト”で発掘

 アピールの場が決定的に不足していた高校生を対象に、実質的なトライアウトとしてNPBのスカウトなどを前に実戦形式を含めた練習が公開された。進路が閉ざされかねない高校生、しっかりと能力を見極めたいプロ側双方にとってウインウイン。同年の8月29、30日に甲子園で行われた西日本会場には、山下舜平大(福岡大大濠高―オリックス1位)や内星龍(履正社高―楽天6位)など77名が、9月5、6日に東京ドームで実施された東日本会場には豆田泰志(浦和実―西武育成4位)ら41名が参加した。

【次ページ】 「宏斗は雲の上の存在」

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