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「高校に行く時間がもったいない」16歳の女子レスラーに師匠もビックリ「お前バケモノだな」 姉超えを誓う、稲葉あずさの“青天井の可能性”
posted2024/07/15 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Hideki Sugiyama
JTO所属のプロレスラー・稲葉あずさは2007年11月29日に愛知県豊川市で生まれ、2023年3月3日にデビューした。つまり15歳でプロレスラーになった。
「中学の卒業式の4日前、ギリギリ中学生デビューでした(笑)」
プロレスデビューと同時に髪を染めたかったそうだが、卒業式前ということで叶わなかった。対戦相手は稲葉ともか。5歳年上の姉だ。
ともにフルコンタクト空手がベースで、プロレスの試合でも蹴りを得意とする。父が空手の先生で2人とも幼い頃から稽古に励んだ。ちなみに稲葉家は4人きょうだいだ。
「男2人はか弱いんですけど(笑)。ともかは小学生の頃から全国大会に出たり強かったですね。私も中学時代は空手を頑張って、1回だけ全国大会に出ました。1回出て大満足でした」
お姉ちゃんが“先輩”になった日
その時すでに、彼女はプロレスラーを目指していた。姉のともかが16歳でデビューした姿を見て、そのカッコよさに見惚れたのが小6の時。中学生になると、お年玉を貯めてゴールデンウィークや夏休みに千葉のJTO道場まで練習しに行った。親には内緒だったが、行ってしまえばともかの部屋に泊まればいい。
「もともとお母さんがプロレスファンで。プロレスラーを目指してたんですけど、ケガで入門テストを受けられなかったんです。その夢をともかが叶えたんですよ。もう自慢のお姉ちゃんでしたね。
だけどお父さんは、私がプロレスラーを目指すのを認めてくれなくて。ともかもデビュー前にケガをして大変な時期があったので、心配したんですかね。それで高校受験もしたんですけど、中3の終わり寸前で“プロレスラーになっていいよ”っていきなり折れてくれました。“もっと早く言ってよ”と思いましたけど(笑)」
昨年1月から正式にJTOの練習生となり、2月にエキシビションを経験、そして3月にデビュー。「他の団体だったら、そんな短期間でデビューできてなかったと思います」とあずさ。
JTO代表のTAKAみちのくはWWE(WWF)で活躍し、新日本プロレスにも長く参戦中。豊富な経験と技術力から、指導者としても評価が高い。加えて、姉のあずさから誰よりも厳しい指導を受けた。
「正式に入門したら、もうお姉ちゃんじゃなく先輩でしたね。毎日泣かされてました、道場でも家でも。その頃の私は中学を出たばっかりで、社会人として挨拶ひとつちゃんとできなかったので。レスラーとしても“稲葉姉妹”として見られて恥ずかしくない選手になってほしかったんでしょうね。自分が子供なので、他の先輩はどうしても甘々になっちゃう。その分ともかが厳しくしてくれました」