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「高校に行く時間がもったいない」16歳の女子レスラーに師匠もビックリ「お前バケモノだな」 姉超えを誓う、稲葉あずさの“青天井の可能性”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/15 11:02
16歳の女子プロレスラー・稲葉あずさ
代表も「お前バケモノだな」
姉妹レスラーとしての注目度も手伝ってか、あずさはデビューから短期間で大きな経験を積むことになる。JTO QUEEN、JTO GIRLSと所属団体の女子2大王座に挑戦。スターダムの新人王座フューチャー・オブ・スターダムとNEW BLOODタッグタイトルにも挑戦した。姉と組んでアイスリボンのタッグ王座に挑戦した試合は、フルタイムドローまで1分を切る大熱戦だった。
JTOルールは決着に3カウントがなくKO、ギブアップのみ。カウント2で返す攻防で盛り上がることがなく「お客さんがシーンとしてしまうこともあります」。しかしそのルールで闘う中で、蹴り技やグラウンドなどシンプルな技で魅了する地力をつけた。とりわけ今年3月、ともかのQUEEN王座に挑んだ一戦は白熱の名勝負だった。
「私はもともと自分に自信がないんです。運動神経も見た目も全部。高校に行かなかったのも、プロレスとの両立は絶対無理だと思って。高校に行く時間がもったいなかった。
でもプロレスだけは楽しいんですよ。デビューしたら、他の選手の細かい動きとかうまさも分かるようになって、それも楽しい。プロレスは一生続けたいし、自信を持ってできるようになってきました」
そんなあずさを見て、TAKAは「お前バケモノだな」と声をかけたそうだ。
「デビュー1年でこれだけタイトルマッチやって、どんどん成長して勢いマシマシでバケモノだって。そう言われて私も自信がつきました」
ともかとのタイトルマッチでは、コスチュームを空手着をイメージした白から赤に変え、髪も染めた。
「赤はセンターの色、エースの色。戦隊ものだと主人公の色ですよね」
「10代の強みですよね」体重も身長も成長中
デビュー当時からのモットーは「姉超(アネゴエ)」。3月からはタッグを解消して「姉離」をアピールした。
「デビューした頃は“姉超といってもまだ先だろうな”と思ってたんです。でも今は違う。ともかに勝つ自信があります。経験値では勝てないけど、気持ちと練習量では私が上。ともかはチャンピオンで団体の顔だから、他団体の試合に出たりプロモーションとか取材もある。その時間、私は道場にいられるので」
合同練習の前には、TAKAの指導でフィジカルトレーニングもするようになった。本格的なジムにも行きたいのだが、18歳未満なので契約できないらしい。それでも、練習生時代と比べて体重が10kg増えた。
「太ったんじゃなく、ちゃんと筋肉で増えたんです。あ、あと身長。背がまだ伸びてるのも10代の強みですよね。最近、ともか(の身長)を抜きました」