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173cmの長身でも「“モデル体型”じゃダメなんです」…「悔しい」日本選手権3連覇で走高跳・高橋渚(24歳)が見せた“成長と課題”
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/28 17:00
女子走高跳で日本選手権3連覇を達成した高橋渚(センコー)。目標にしていた1m90cmにはとどかず、試合後には悔しさも見せた
一方で、今季ここまで高橋の安定感は日本のトップジャンパーの中でも群を抜いていた。
2月に自己ベストとなる1m87cmを成功させると、その後の大会でも安定して1m80cm台の後半をマーク。5月の静岡国際では自己記録をさらに更新する1m88cmの跳躍にも成功していた。特筆すべきは、その安定感を慣れない環境の海外大会でも崩れることなく発揮し続けていたことだ。
今季、海外の大会への参加を増やした背景にあったのは、同世代の選手たちの活躍だ。本人は昨年、こんな風に語っていた。
「ブダペスト世界陸上で金メダルを獲ったやり投げの北口(榛花)さんや、アジア選手権で優勝した走幅跳の秦(澄美鈴)さんとか、日本の女子選手から世界でもトップクラスの記録が出てきている。やっぱりダイヤモンドリーグとか世界最高峰の舞台で戦う経験値をどんどん貯めていることが大きい。走高跳でも海外の大会に出られれば、ハイレベルな記録で競える機会もどんどん増えると思うので」
「この選手が跳べて、なんで自分が跳べないんだろう」
そもそも近年は、海外にコンスタントに参戦している女子の走高跳選手はいなかった。そのため、当初はエントリーの仕方もわからず「やり投げの選手に交ぜてもらって、単身で」参加するなど、手探りの状況だったという。それでも年明けには心機一転、所属先も移籍し、有言実行で世界転戦を実行してみせていた。
「日本だけでやってるのとはちょっと違って、メンタル面は大きく変わったと思います。欲も出ました。海外勢にとっては1m90cmなんて跳んで当たり前。『この選手が跳べて、なんで自分が跳べないんだろう』とか、いろんなことを考えるシーズンになりました。
(自己ベストと)ほんの数cmしか差がないのに、大台になると自分にとっては心理的な壁がありました。でも、そういう意識がなくなって1m90cmが『跳べる』と思える高さになったのは大きいと思います」