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「ダルビッシュ君は天才」桑田真澄がホレた才能…“タバコ騒動”から19年、WBCで「エグい!」後輩に愛される“37歳の200勝投手”になるまで
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byAdam Glanzman,Getty Images/Koji Asakura
posted2024/05/20 17:01
日米通算200勝を達成したダルビッシュ有。そのキャリアを名投手や監督の言葉とともに振り返ってみよう
09年日本シリーズ第2戦をNumber誌上で解説した桑田は、日本ハム先発のダルビッシュの投球を「10年後のダルビッシュくんと今のダルビッシュくんの二人が、交互に投げていた感じがしましたね」と表現したことがある。
その背景には、ダルビッシュの左臀部の状態が思わしくなく、42日ぶりのぶっつけ登板だったことがある。ダルビッシュ本人が「腰を使わず、歩幅を狭めて投げた」と言うように、通常とは違う別人のごときフォームで巨人打線を封じ込めた老獪さを「10年後のダルビッシュくん」と桑田は言い表した。
それから10年以上の時を経て――桑田の話したように、ダルビッシュはベテランらしい投球術を手に入れながらも、20代の頃と何ら変わらないかそれ以上の剛腕ぶりをメジャーの舞台で見せつけているのだから、その鍛錬ぶりには驚かされるばかりである。
2012年にも、桑田はテキサス・レンジャース1年目にして16勝を挙げたダルビッシュを手放しで絶賛している。
「すごいボールを投げるピッチャーは過去にもたくさんいましたけど、とんでもなく速い豪速球を投げられて、しかも七色の変化球を操れた人は一人もいない。僕が天才だというのはそこなんです」
桑田が定義する「天才」に当てはまる投手──それがダルビッシュなのである。
日本人メジャー初の最多勝にカブスの監督は…
<名言3>
彼は本物のプロフェッショナル。彼がやり遂げたことを誇らしく思う。
(デビッド・ロス/Number1014号 2020年11月5日発売)
◇解説◇
ダルビッシュは2013年に最多奪三振(277個)のタイトルを獲得し、完全試合まで“あと1人”の快投を見せたことも話題になった。2017年途中には名門ロサンゼルス・ドジャースに請われて移籍。トミー・ジョン手術での離脱、さらにケガに苦しんだ期間はあったものの、メジャーリーグの舞台で勝ち星を積み重ねていった。
そんなダルビッシュの価値に再び世間が気づいたのはシカゴ・カブス所属時、2020年のことだった。コロナ禍による60試合の短縮シーズンながら8勝3敗、防御率2.01、93奪三振の好成績を挙げ、日本人メジャーリーガー初となる最多勝を獲得。ナ・リーグのサイ・ヤング賞投票でも2位にランクインする、充実のシーズンだった。
ナ・リーグ中地区優勝に大きく貢献したダルビッシュに対して、ロス監督は手放しで称賛する。
「ユウは、年間を通してすばらしい投球をしてくれたし、すばらしい1年だったと思う。監督としては、5試合ごとに投げてくれることが楽しみだった」
ローテーションをしっかりと守るタフさ、12試合中10試合でクオリティースタート(6回以上、自責点3以内)をクリアする抜群の安定感を高く評価するとともに、ダルビッシュの真髄についてこのようにも語る。