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「これは宇野ならではの言葉だ…」涙ゼロ、報道陣も笑顔に…宇野昌磨(26歳)の“爽やかすぎる引退会見”を現地で見た「自分をほめたいなと思います」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/05/15 17:02
5月14日、都内で行われた宇野昌磨の引退会見
宇野を知る関係者が口を揃えて語ること
2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪は個人戦で銅メダル、団体戦で銀メダル。世界選手権では2022年、2023年と連覇。これらをはじめ、数々の輝かしい成績を残してきた。
国際大会ばかりではない。全日本選手権に13年連続で出場を果たし、6度の優勝を含め10年連続で表彰台に上がったことは特筆される。
しかし宇野の真価は、成績のみにおさまらない。
一緒に練習したことのある選手、コーチ、誰もが宇野の練習への姿勢や練習量について語る。それらの言葉が物語るのは、文字通りの「努力の人」であったことだ。それはさまざまな面で形となって結実してきた。ジャンプを例にすれば、最初に成功させた4回転フリップを皮切りにトウループ、ループ、サルコウと習得し、フリーで5本組み込むまでに至った。同じジャンプでも、踏み切る前の動作の難易度をあげて進化させてきた。
技術面はむろんのこと、表現面でもシーズンを重ねるごとに深化させた。昨シーズン、そして今シーズン氷上で披露したプログラムはかつてない高みへと達していた。理想とする演技を日々弛みなく追い求めてきた。自らの価値観のもとに真摯に取り組んできた。その成果があった。
「彼はよくやった、と僕は思います」
会見中、宇野は言った。
「この日まで、フィギュアスケートに全力で毎日取り組んできた自分をすごくほめたいなと思います」
あるいは自身を客観視して語った。
「すごい彼はよくやったな、と僕は思います」
てらいなく言い切ることができたのも、それを聞く人々がそのまま受け取れたのも、まさに全力の日々を長年積み重ねてきたからにほかならない。成績をはじめ、明確に全力の日々を氷上に示してきたからこそである。
全日本選手権最後の出場となった2023年にも優勝していることは、トップスケーターであり続けたことを示している。その中で引退を選んだのもまた、全力を尽くす日々を続けてきて、「やりきった」からにほかならない。
宇野は、ここまで成績を残すに至った理由について「僕はほんとうに周りの方々に、出会う人たちに恵まれたなって思っています」と答えている。「恵まれた」というのはたしかにそうだろう。サポートする人々は皆、宇野に対して愛情を持ち、常に全力であったからだ。
一方で、彼らが全力であったのは、宇野の真摯な姿勢に惹かれたからであったこと、そして宇野が彼らに敬意を払い、大切に思い続けてきたからこそであるのもまた、共通していた。「恵まれた」と感じる人々を周囲に引き寄せたのは、宇野本人にほかならない。