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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
異例の“イップス”告白、DeNA徳山壮磨24歳に聞いた「再発の不安はないのか?」「大丈夫です」本人は言い切った…一軍登板ゼロ“2年間の苦闘”を語る
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/06 11:04
4日の広島戦、松山竜平に逆転本塁打を喫した徳山。この試合の前、徳山に「打ち込まれた時」についての考えを聞いていた
「プロになると、試合のみならず、練習であってもすごく注目されるじゃないですか。いいところを見せなくちゃいけないって思いが強くなってしまったんです」
完全にひとり相撲だった。学生時代に人がうらやむような実績を積み上げていても、環境の変化に適応できず、知らず知らずのうちに自分自身を追い込んでしまっていた。1年目の2022年シーズン、徳山はイースタンリーグで17試合に登板し2勝6敗、防御率3.49という成績だった。明らかにおかしいと感じられるのは四死球を49個も出したことだ。速球に加え、制球力の良さが徳山の持ち味のはずだった。
「学生時代には出さなかったフォアボールを連発して、どうしてなんだろうって。フォアボールを出さないようにしなきゃと考えるようになって、余計悪循環になってしまって」
イップスを否定し続けた1年目
原因不明の乱れる制球。自分はもしかしたらイップスなのではないか――ふと頭によぎることもあったが、自分の中でそれを全力で否定した。プロ生活は始まったばかり、仮にそうだとしたら自分の未来はどうなってしまうのか。認めてしまえば絶望と恐怖に支配されてしまう。プロのアスリートとして拒絶するのは当たり前の心理だった。
だが、認めざるを得ない時がやってくる。明けて2023年1月、大学の先輩である和田毅(ソフトバンク)の自主トレに参加した徳山だったが、ピッチングをしてみると、ボールが意図しないところに飛んでいった。ガッシャン、ガッシャンとボールがネットに当たる音が何度も耳にこだました。
「マウンドに立てば震えるし、投げ方がわからないというか、ここに投げたいと思っても、手が硬直してしまって、ボールが離せなくなってしまったんです」
いま明かされる「明かせなかった本心」
思うようなポイントでリリースできない。徳山は自分がイップスだと、はっきりと悟った。実はこの時期、徳山にインタビューをしていたのだが、2年目のシーズンに向け「一軍で投げられるように頑張ります!」と気丈に答えていた。