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「菊池涼介以来の衝撃だった」抜きん出た守備力に打力を加え、レギュラー奪取を狙うカープ4年目矢野雅哉の正念場

posted2024/04/22 11:01

 
「菊池涼介以来の衝撃だった」抜きん出た守備力に打力を加え、レギュラー奪取を狙うカープ4年目矢野雅哉の正念場<Number Web> photograph by JIJI PRESS

セカンドで打球をさばく矢野。今季はショートとの併用でセンターラインの守備に貢献している

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 人生には分岐点を迎えるときがある。右へ行くのか、左へ行くのかで未来が大きく変わる。プロ野球人生においては1、2度あるかないか。広島の矢野雅哉は今、まさにプロ野球選手としての分岐点に立っている。

 新井貴浩新監督を迎えた昨季、3年目だった矢野は守備固めと代走としての地位を築き、プロ入り後最多の93試合に出場した。今季は22年以来となる開幕一軍入り。昨季同様、切り札的存在として起用されていたが、4月5日の中日戦に初めてスタメン起用されてからその頻度が増えてきた。

 昨秋、侍ジャパンに選出された小園海斗をサードに回して遊撃で先発し、二塁で出場すれば10年連続ゴールデン・グラブ賞の菊池涼介の代役を見事に果たす。“投高打低”の色が濃く、投手力を中心とした守備力がペナントレースの行方を左右しかねないシーズンで、センターラインの一角を担い、リーグ最少3失策の広島守備陣を引き締めている(4月22日時点。データは以下同様)。そして今まさに、レギュラー獲りの好機を迎えている。

「守備でミスしたら終わりだと思っている。それを売りにプロに入れたので、誰にも負けたくない。そこで負けたらアカン、と」

プロ4年目の進化

 もともと守備には定評があったが、昨季までは強弱がはっきりしたような勢い任せと強引さが目立つ場面もあり、93試合で6失策を記録した。今季は打球への入り方、捕球から送球までに、落ち着きや滑らかさがあるように感じられる。出場15試合で失策はいまだゼロだ。

「相手選手のスイングとか打撃も見えてきて、この打球ならアウトにできるなというのがだいぶ分かってきました。これまで自分に余裕がなかったけど、今は打球が飛んできてからも走者を視界に入れながら守れています」

 感性や技術だけではない。試合前から自軍の投手の調子や相手バッターのスイング軌道を確認。試合中にその情報と生の感覚をすり合わせながら、イメージを頭に入れて守っている。

 亜大時代から守備力はプロスカウトからも認められていた。3年秋に首位打者となったものの、打撃面には課題を残したことでドラフトでの指名は微妙な立場だった。だが、広島の担当松本有史スカウトは、初めて見たプレーに衝撃を受けたという。

「三遊間の当たりをダイビングキャッチしたと思ったら一塁に矢のような球を投げた。あんな選手いたかなと思ったら、入学を控えた高3の矢野だった。守備に関しては、キク(菊池)以来の衝撃だった」

 大学入学前に10年連続ゴールデングラブ賞の名手を見いだした敏腕スカウトを唸らせた。ドラフト前の会議では打撃の非力さを懸念されながらも、その可能性を認められた。

【次ページ】 レギュラー奪取への覚悟

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