2023年M-1・連続インタビューBACK NUMBER
M-1王者は天才か努力家か…「決勝直前にM-1全部見返した」史上最速優勝・令和ロマンが語る“圧倒的努力”「だから異例のネタ選びをした」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/07 11:03
2023年M-1王者の令和ロマン。高比良くるま(29歳、左)と松井ケムリ(30歳)。結成5年8カ月、史上最速でのM-1優勝だった
ケムリ 前説の意味がなくなっちゃう。M-1がどんどんカッコよくなってきて、「さあ、始まりますよ!」という演出が派手になってきている。長いCMの最中にも、スタジオでは何かやった方がいいと思うんですよね。
くるま (7番手の)真空ジェシカさんと(8番手の)ダンビラムーチョさんの間に長めのCMが入ったんですけど、あのときも何か挟めないのかなって思った記憶があります。このままだとやばいな、という空気だったんで。盛り上がっていないとき、M-1側は見守るしかしないじゃないですか。いや、違うでしょうと思っちゃいましたね。
――でも、つくっている側には「M-1はテレビ番組ではなくて、漫才コンテストの中継なんだ」という意識があるそうです。いい番組ではなく、いい大会にしよう、と。だから極力、自然な形を崩さないようにしているんじゃないですか。
くるま でも演出はしていますよね。オープニングを長くして、CGの使い方も年々、派手になってきた。確かに最初の頃は、素材のまま出していてもおいしかったのかもしれない。でも、時代も番組も変わってきてるわけですから。新鮮ならいいというのではなくて、新鮮な状態でさらに酢で締めた方がおいしいのなら、そうやって出すのがプロの料理人じゃないですか。何らかの手立ては必要だと思うんですよ。それがないから、今回、僕たちは自分でやったというだけで。
ケムリ 客いじりも要はそういうことですよね。
――M-1予選のときも、あんなに長くツカミ(ヒゲともみあげのくだり)をやっていましたか?
くるま 予選はやってないです。決勝よりも時間がシビアなので。準々決勝以降、ネタ時間は4分なんですけど、4分30秒以内なら許容範囲とされています。決勝の時間コントロールは演者に任されているんですけど、予選の場合は4分15秒で警告音が鳴って、4分30秒で強制終了(爆発音とともに暗転)になってしまう。なので警告音が鳴ると、お客さんがドキドキして笑えなくなっちゃうんですよ。だから、4分10秒ぐらいにおさまるようにしているんです。決勝はそれがないので、4分30秒ぐらいまでならいける。だから、あれだけ長いツカミができるんです。
<続く>
(写真=末永裕樹)