濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「私はスターダムの“超新星”」女子プロレスラー・天咲光由(21歳)に芽生えた責任感…退団直前の林下詩美が讃えた「2年間の成長」とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/04/05 11:02
スターダム退団が決まった林下詩美とシングルマッチを行った天咲光由(21歳)
「もう心配はしてないから」天咲と林下の約束
デビューから2年経っての林下戦、天咲の試合ぶりは見違えるようだった。技が増え、精度はさらに上がり、そこに声=気持ちが乗る。結果は林下の勝利。フィニッシュはジャーマン・スープレックスで、2年前と同じだった。しかし内容の充実度はまるで違っていた。
2月の新人王座フューチャー・オブ・スターダム挑戦に続いて、天咲のキャリアにおけるベストバウトだったと言っていい。リングネームの由来である「スターダムのてっぺんに咲く」姿が想像できる試合に思えた。
「詩美さんがスターダムの逸材(というキャッチフレーズ)だったように、私はスターダムの超新星です。これからのスターダムは私がてっぺんに咲きます。そして、また詩美さんとシングルして勝てるようになるまで、私はこのリングで頑張ります」
試合後のリングでそう天咲は言った。「見守ってるから。またシングルやろう」と返した林下は、インタビュースペースで2年間の成長を讃えている。
「デビュー戦は“こんなか弱くて大丈夫かな”と思ったけど、2度目のシングルを闘ってみて、光由はスターダムの超新星で間違いないです。もう心配はしてないから。光由がスターダムのてっぺんに駆け上がるのを遠くから見てる。これは約束です」
“退団騒動”のなかで天咲に芽生えた責任感
京都は天咲の出身地。特別な場所での林下とのシングルは、特別な上にも特別な一戦だった。ここから先、いつ闘えるかも分からないのだ。
「詩美さんの退団が発表されて、スターダムでの残り少ない試合の一つを私にいただいた。嬉しかったし誇りに思います。自分に期待してくれているんだなって。素直に嬉しかったです。
詩美さんには支えてもらったし、デビュー戦の相手もしてもらって。デビュー戦の時に“この人をいつか超えなきゃいけない”と考えたのを思い出しました。急に決まった試合だけど、いま超えなかったら超える場所がないんだって」
結果として、“いま”林下詩美を超えることはできなかった。けれど急な別れを前に「いま超えなければ」と現実的に考える天咲がリングにいたのも間違いない。だから、この試合には心地よい感触が残った。天咲は闇雲にぶつかるだけでは終わらなかったのだ。
林下は、天咲が考えながら試合をしているのが伝わってきたという。別の先輩レスラーは、スターダムの社長交代や“退団騒動”の中で天咲に責任感が芽生え、それが成長につながっているのではないかと言っていた。
では天咲自身はどう考えているのか。「今までとは意識の持ち方が変わりました」と言う。