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りくりゅう世界選手権銀メダル「2人とも精神的に成長できたな」珍しくネガティブな木原龍一を三浦璃来は励ました「あなたは…できるんだよ!」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2024/03/30 11:05
世界選手権で銀メダルを獲得した三浦璃来&木原龍一の“りくりゅう”ペア
「カナダのお客さんは、皆さん温かいです。良い演技したら応えてくれるし、良い演技をしなくても拍手で励ましてくれます。だから会場の(直前の)盛り上がりを、僕は正直、楽しんでいました。『このお客さんみんなに、僕たちのことを好きになってもらいたい』という気持ちで、演技前は笑っていたくらいです」
フリーの冒頭、高さのあるツイストを決めて波に乗る。スロージャンプは2つとも成功させ、なにより、2人のなめらかに加速していくスケーティングが映えた。フリーは144.35点で首位をマーク、総合点では追いつかなかったものの、見事に銀メダルをつかんだ。
木原が運動誘発性の喘息に
ところが表彰式を待つ間、木原が急に咳をし始め、めまいで立っていられない状態に。酸素飽和度が下がっていたことから、酸素吸入などの治療を受けた。対応にあたったチームドクターの土屋明弘医師はこう説明する。
「低血糖や過呼吸など、あらゆる可能性を考えて検査・処置していきました。精密検査をしたわけではありませんが、消去法から、運動誘発性の喘息が起きたのではないかと思われます。最終的には、喘息の吸入薬で落ち着きました」
運動誘発性喘息は、今季の前半に千葉百音も診断されている。
「過度な運動やストレス、気候など、何かがきっかけで起きる。いつも苦しくて持久力がないと思っていたら隠れ喘息だったということもあります。ドーピングにかからない薬があるので、治療も可能です」
2人が元気そうな様子で現れたのは、フリーの演技から2日後だった。
「今はもうだいぶ症状も落ち着いて、薬で治まっています。日本に帰ったらちゃんと病院を受診します。ご心配をおかけしました」
木原はそう話し、具体的な病状を語る。
「喘息は、今思い返せば、初めてじゃなかったのだと思います。試合後にちょっとした咳の症状が出ることや、ここ数カ月、練習中から明らかに息が上がったり、手のしびれを感じたりする時がありました。トレーニング不足からくるものだと思っていたのですけれど、喘息だったのかも知れません。まずはしっかり日本で治療していきたいと思います」
2人とも精神的に成長できた
隣でしずかに聞いていた三浦が「しっかり治療したい」という言葉にうんうん、とうなずく。そして今季について振り返った。