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西谷監督が“甲子園最多タイ”の68勝目…大阪桐蔭なぜ今年も強い? 節目の大舞台で先発《154キロ右腕》平嶋桂知が「背番号1」を背負う“納得のワケ”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/23 11:07
今大会で大阪桐蔭のエースナンバーを背負う平嶋桂知。187cmの長身で鞭のようにしなる腕から投じられるMAX154kmの速球が武器
センバツ直前の3月には、平嶋いわく、左足を上げる際の反動を利用し、軸足である右足を「押し込むように」地面に乗せることでよりフォームが安定するようになったという。
「思い切りだと逆に力んでスピードがでないんで、7、8割の力のイメージで投げるように意識できるようになりました」
その道程にはコーチの手助けもあったが、基本的に自分が考えて導き出した形だった。平嶋は成果を甲子園で証明し、恩師に歴代最多タイの監督68勝を届けた。西谷は偉業について、「監督で勝ったわけではない」と念を押し、こう結ぶ。
「歴代のOBたちが頑張ってくれたものに、今いる子供たちが積み重ねてくれた勝利なので、嬉しく思っています」
西谷が頭を垂れながら紡ぐ言葉には、自身が「難しい」と常々言っている初戦で好投した平嶋も、確かにいる。
大阪桐蔭の背番号「1」が持つ意味は…?
大阪桐蔭の背番号1。
“日本一勝っている監督”が、この称号を平嶋に与える理由はこうだ。
「下級生だった頃からの経験もそうですし、上級生になってふさわしいと思ったからです」
そして西谷は、ニヤリと笑い付け加えた。
「でも、他のピッチャーも必死ですから。みんな背番号1を狙っているんでね」
そう、このチームは猛者ぞろいなのだ。北海戦で平嶋から継投した中野大虎に南陽人。最速151キロを誇る、身長189センチの話題の2年生右腕・森陽樹らが控えている。
熾烈な争い。それは、エースナンバーを背負う平嶋が誰よりもわかっている。
「チームを引っ張るという責任があると思います。ピッチャー陣を代表して1番をもらっているんで、『自分がエースなんだ』というピッチングを、チームや試合を観てくださる方に見てもらいたいです」
宿命を背負いしエース。
平嶋がマウンドに立つ。動じず、隙を見せず、豪快に腕を振る。
目指すは明確。
絶対エースを誇示しての、春の日本一。